ファイトカード

高田総統劇場

 第8試合が終わったあとも小川への攻撃は終わらない。コーナーに小川を逆さ吊りにすると、全員で「チキン!」を連発。そしてカメラに向かって「ドゥ・ザ・ハッスル」を宣言した。意気揚々と引き上げていく高田モンスター軍。最後まで共闘を拒んでいたガファリだったが、花道を戻るモンスター軍の後を追って、リングを去っていった。

 この光景にぶち切れた橋本はコスチュームのままリングに上がる。そしてマイクを握ると「高田! こんなことして面白いか! かっこつけてんじゃねぇ! お前はこんなプロレスが見たいのか!俺たちはプロレスを壊させやしないぞ!」と怒りを爆発させる。

 そしてようやく立ち上がった小川に「俺たち、かっこ悪いな。めちゃくちゃかっこ悪いな。でも頑張ろうや」と声をかける。

 これに対し小川も「この恨みは絶対に忘れないからな! 逃げない! 絶対に逃げねぇぞ! 」と叫ぶ。

 そして2人でスタンドマイクを用意し「残ってくれたファンの人、頭に来ているファンの人、今度勝つためにやらせてください」と悲しみと怒りの「3・2・1 ハッスル ハッスル」を行い、静かにリングを後にした。

 …すると再びスクリーンには高田総統の姿が。「まだ減らず口を叩く元気があるようだな。今日のところはこのくらいにしておいてやろう。ただな、世界中にはまだ血に飢えたモンスターたちがゴロゴロいるんだよ。オイ、島田。例の件は進んでいるか?」となにやら島田プロデューサーに問いかける。島田プロデューサーは「はい。着々と進んでいます。もう外堀は埋まっています」と答える。それを聞いて不敵な笑みを浮かべる高田総統。もうすでにハッスル3へ向けて、高田総統の陰謀は動き始めているのであった…。

第8試合

4分46秒 ガファリプレス→体固め

 ハッスル1同様、試合前から激しく抗争を繰り広げてきたOH砲と高田延彦。静かに集中力を高める小川とは対照的に、大会が始まってからも高田モンスター軍の挑発は続いた。自分の控え室でモンスターたちに「ハッスルチキン」をご馳走した高田総統は、その食べかすを小川の控え室に差し入れるという嫌がらせ行為を行う。これに対して怒り心頭の小川だが、控え室を訪れた橋本に「これくらいのことは気にするな。リングでぶっ倒せばいいんだよ。小川、プロレスラーって何だと思う? 俺は裸一貫で戦うことだと思う。俺はお前との闘いで何かが見えた。勝負を超えたところにプロレスの真髄があるんだ」と諭され、落ち着きを取り戻す。そして橋本が去った控え室で「『プロレスラー』か…」と自問するのであった。

 モンスター軍から激励を受けて、控え室を後にするガファリ。一見足並みが揃っているようにも見える高田モンスター軍だったが、実は内部分裂が発生した。ガファリが控え室を去ると「あいつはモンスターじゃないですよ」と島田プロデューサー。高田総統までも「分かっている。飛べないブタをいつまでも使う気はない」とコメントする。さらにガファリへの誹謗中傷を続けるモンスターたち。一体モンスター軍に何が起こったのか…。

 花道に姿を現せた小川は橋本の言葉に一つの答えを出す。これまでリングに上がる時は常に装着していたオープンフィンガーグローブ(OFG)を花道で投げ捨てたのだ。文字通り「裸一貫」となった小川。無念のレフェリーストップ負けとなった橋本の魂を受け継ぎ、ガファリとの一戦に臨むのであった。

 そして今まさにゴングが打ち鳴らされようとした瞬間、高田総統が姿を現した! まるで「宇宙戦艦ヤマト」のデスラー総統の様な軍服を身に着けた高田総統は、リング上の小川を見下ろしながら、ゆっくりと口を開いた。

 「日本のプロレスラー、そしてファンの諸君。我こそは高田モンスター軍総統・高田だ。我々は近い将来日本のプロレスを根こそぎ叩き潰す。約束する。小川くん、ここから見下ろす姿は虫けらのように小さいな。まずはその減らず口を黙らせよう。君は言ったな『何人でも相手にしてやる』と。そのリクエストに真摯に応えよう。出て来いモンスターたち!」

閉じる するとコールマン、ランデルマン、シルバ、ボビッシュ、ローデスJr.のモンスター軍の全メンバーが花道に現れたのだ。そのままリングに上がる5人のレスラー。しかもレフェリーは島田プロデューサーに摩り替わっているではないか。2.29両国でガファリのビデオを見せられた小川が口にした「何人でも相手になってやる」という発言を逆手に取った高田総統が、小川VS高田モンスター軍の1VS6のハンデキャップマッチを強行したのだ。

 この卑怯な仕打ちにも小川は退かない。ゴング直後、STOを連発し、コールマン、ランデルマン、ローデスJrを蹴散らす。さらにボビッシュを巴投げで豪快に投げると、一気にパンチ攻撃に出る。しかしここでまたしても島田レフェリーの邪魔が。この試合に限ってOFGを外していた小川の拳攻撃を反則だと警告したのだ。それでも何とかSTOを敢行し、フォールにいく小川。しかしここで他のレスラーが一斉に小川にストンピングを浴びせかけた。小川の反則にはすぐに注意した島田レフェリーはこの行為を無視。小川は完全に孤立してしまっていた。

 高田モンスター軍でありながらこれに参加しなかった男がいる。当初対戦相手であったはずのマット・ガファリだ。島田レフェリーにリングに上がるよう促されるものの、頭を抱え苦悩するガファリ。1人のアスリートとしてモンスター軍のやり方に疑問を感じていたのだ。

 その間も小川への公開リンチは続く。次々と襲い掛かるモンスターたちの非常な攻撃に小川はぐったりとマットに崩れ落ちる。そしてシルバが強烈なチョークスラム。もう完全にグロッキー状態の小川にはフォールを返す力は残っていなかった。

 そしてそれまで静観していたガファリが半ば無理矢理リングに上げられ、ガファリプレスを決めたのであった。


第7試合

14分16秒 レフェリーストップ

 プロレスVS総合格闘技という構図の第7試合は、まずコールマン・ランデルマン組から入場。しかし、花道にはコールマンただ1人。一体、ランデルマンはどこにいるのか?

 そのままロープの前まで進むコールマン。すると、煙が巻き上がり、突如としてランデルマンが姿を現した。このイリュージョンに観客も大いに盛り上がる。

 続いては橋本・川田組。2人の入場曲がミックスされたBGMに乗せて、まず登場したのは川田。すこし距離を置いて、橋本が続く。

閉じる 先発は橋本とランデルマン。軽快にロープへ走ったかと思えば、自軍コーナーへ飛び乗り、コールマンと耳打ちするランデルマン。トリッキーなムーブを展開する。しかし、橋本は動じず、冷静にランデルマンを見る。

 まず動いたのはランデルマン。タックルで突っ込むが、橋本はしっかりとガード。ならばとロープへ走りこめば、橋本も応じ、2人はリングを十字に走る。ランデルマンは、その驚異的な跳躍力で橋本を馬跳びにかわすと、ドロップキック一閃。しかし、橋本の急ブレーキで不発に終わる。

 仕切り直しとコーナーへ戻り、コールマンにタッチ。橋本も川田と交代した。川田はタックルを放つが、お株は奪わせないとばかりにコールマンはしっかりとガード。リングへ叩きつけると、マウントポジションに移行し、パンチを乱打する。だが、ここは橋本がすかさずカットに入る。

 再びコールマンはランデルマンへタッチ。川田の背中にダブルのエルボーを叩き込む。川田がエルボーで応戦すれば、ランデルマンも負けじとエルボー。エルボー合戦になるかと思いきや、一瞬の間から川田が後ろ蹴りでこれをいなす。

 ここで橋本がリングイン。ランデルマンのパンチに対し、地獄突きで返答。替わって入ったコールマンには、負傷した右肩で放つ袈裟斬りチョップを落とす。しかし、橋本は放った後に苦しそうな表情に。川田にタッチした。ダメージはやはり深刻のようだ。

 ならばと今度は川田が逆水平でコールマンを追い詰める。だが、打ち終わりを狙ってコールマンが川田の顔面へパンチ。ひるんだ所をランデルマンと共にパンチの雨を降らす。そのままリングへ入ったランデルマン。続けざまにパンチで追い込むが、川田はプロレスラーらしく張り手でお返し。さらにバックドロップをお見舞いする。

 だが、ランデルマンは替わった橋本の右肩へ頭突き。リングインしたコールマンがその右肩を腕ひしぎで絞り上げる。たまらず川田がカット。タックルに入ったコールマンをガッチリとホールドし、膝蹴りからDDTにきって落とす。立ち上がったコールマンは川田の顔へ再びパンチ。川田はローキックで応戦。今度は川田が打ち勝った。さらに、走りこんでトーキック。乱入したランデルマンも同じくトーキックで迎撃する。

 しかし、ここでコールマンのアマレスパワーが火を噴く。フロントから双差しで川田の体をホールドすると、フロントスープレックスを2連発。一気に形勢を逆転する。さらにランデルマンと共にブレーンバスター。倒れた川田に、ランデルマンはトップロープから体を浴びせかける。さらにコールマンはパンチで攻め立てるが、川田は鬼の形相でエルボー。バックの取り合いから延髄斬りでコールマンの首を刈る。

 ここで橋本がリングへ。コールマンのパンチに対し、得意のキックで応えると、瞬時に水面蹴りを放ち、カットに入ったランデルマンも蹴り倒す。ロープ際へ逃げたランデルマンの腹に膝を落とすと、ここでダメージ深刻とみたジャッジがダウンカウントをスタート。しかし、橋本はそれを容赦せず、またもや禁断の袈裟斬り、そして三角締めへ。飛び出してきたコールマンは、川田がストレッチプラムでカットする。だがここで、何と三角締めを極められていたランデルマンが、その体勢のままキックを放ち、コールマンを救出するという離れ技を見せ、2人は脱出に成功する。

 そして、コールマンが今度はランデルマンを救出。橋本を羽交い絞めにすると、ランデルマンがトップロープからミサイルキックを食らわす。倒れた所をランデルマンが後ろからパンチ、さらに高々と振り下ろした膝爆弾を叩き込むと、橋本の動きが止まる。それを見たレフェリーが慌てて試合をストップ。突然の終幕となった。

 ゴングが乱打されても止まらないコールマンとランデルマン。橋本は鼻から出血。リング上は選手、セコンドが入り乱れ、一時騒然となる。そして、リング下では、島田プロデューサーが満足そうに拍手。何とか立ち上がった橋本は、花道を悠々と引き上げる勝者組の背中を睨み付けていた。この闘い、さらなるドラマを予感させる。


第6試合

9分16秒 ダイビング・キングコングニー→片エビ固め

 遂に、モンスター軍×OHハッスル軍対抗戦の火蓋が切って落とされた。まず始めにコールされたのは“猛牛男爵”ダン・ボビッシュ。KOTCを彷彿とさせる黄色いオープンフィンガーグローブ(OFG)を着用してリングに上がる。OHハッスル軍と見られるプレデターではあるが、その真意は未だ不明。入場時にはいつも通り、チェーンを手に観客席で暴れまわる。規格外の肉体を持つ2人が同じリングに上がった時のその迫力は「リングが狭く見える」という表現がぴったりだ。

閉じる しばしリングを回り見合った後、意を決したように組み合う両者。まずはプレデターが130kg近いボビッシュを持ち上げてマットに叩きつける。負けじとボビッシュも膝蹴りからヘッドロック。プレデターが何度もロープに振ろうとするが、ボビッシュはビクともしない。ボディへのパンチで何とかロックを外したプレデターがボビッシュをロープに振ると、ここからショルダーアタックの打ち合いが始まる。並みのレスラーなら一発で吹っ飛びそうな威力のショルダーアタックが何発も飛び交う。

 ここで勝ったのは何とボビッシュ。我慢しきれず後ろに倒れたプレデターのボディへ強烈なパンチ、そしてボディプレスを決める。さらにコーナーに詰めると、OFGを生かしてボディへのパンチの連打。しかもプレデターの喉をロープに押し付けるという荒々しい攻撃も見せる。しかしそれくらいで怯むようでは“超獣”とは呼べない。ボビッシュのラリアットをかわしたプレデターは高々とボビッシュを持ち上げてバックドロップ。ギロチンドロップを皮切りに、ミドルキック、ハイキック、ローリングソバットと打撃技を次々と披露する。打撃を嫌ったボビッシュはプレデターに組み付いてフロントスープレックス。そこからスタンディングアキレス→片エビ固めと移行し、器用な一面を覗かせる。ロープに逃げたプレデターは身長差を生かして首相撲から膝蹴りをボディに叩き込む。水車落としの要領でボビッシュをマットに寝かせると、必殺技の一つ、キングコングニーを敢行する。しかし間一髪、ボビッシュが回転して、プレデターの自爆を誘う。

 ここでラッシュをかけるボビッシュ。蹴り足を掴んでからのラリアット、パワースラム2連発、そしてフロントスープレックスでプレデターを攻め立てる。このままフィニッシュへとつなげたいボビッシュはプレデターをロープへと振るが、そこに落とし穴が待っていた。

 ロープの反動を利用したプレデターは起死回生のフライングニールキックを決める。間髪入れずにエルボー、そしてトップロープからのキングコングニーがボビッシュの脇腹にグサリ。勝機を逃さずに攻撃を集中させたプレデターが“猛牛男爵”を葬り去った。


第5試合

11分12秒 ローリングエルボー→片エビ固め

 日米ハードコア対決の第5試合。まずは田中・金村・黒田組が入場し、ブリブラダンスを花道で披露する。リングで見せた締めのポーズは「ハッスルハッスル」の特別バージョンだった。一方のグラジエーター・サブゥー・クレディブル組は、姿を見せるやデンジャラスなオーラをプンプンと放っていた。

閉じる 6人がリングに揃うや、ゴングも待たずに試合開始となった。この試合はハードコアマッチということで、戦場はいきなり場外へも拡大。金村とグラジエーター。黒田はサブゥーと、田中はクレディブルとそれぞれ対峙することに。

 グラジエーターは、リングに留まるかと思いきや、すかさず場外で机を用意。代わりにリングへ入ったサブゥーは、ロープを足場に空中技を放ち、黒田をキャメルクラッチに捉える。さらに、黒田をコーナーで逆さ吊りにすると、顔面めがけてスライディングキック。しかし、これはよく見ていた黒田。直前でかわすと、コーナーに絡まったサブゥーの足を勢いよく鉄柱へ叩きつける。

 その間、グラジエーターは金村に椅子攻撃。次いで場外に用意した机に寝転ばすと、体を浴びせかけ、机ごと金村をへし折る。

 サブゥーも、田中を机の上に乗せると、ロープ前に椅子を準備。助走をつけて勢いよく椅子からフライングし、ギロチンを食らわせる。続いて黒田を捕捉したサブゥー。再び椅子をジャンプ台に、ロープ上段へジャンプ。翻り様にまたもやギロチンで黒田を斬首。立ち上がったサブゥーは、荒々しく椅子を場外へ放り投げる。

 だが、日本人ハードコアトリオも負けてはいない。田中はクレディブルをDDTで、サブゥーをダイヤモンドカッターで2人まとめて調理。金村はお返しとばかりに場外でグラジエーターを机に乗せ、トップロープから体を落としていく。

 金村がセントーン、黒田がダイヤモンド“ハッスル”カッターと、徐々に勢いを取り戻す日本人ハードコアトリオ。しかし、サブゥーが椅子を抱え込んで、そのまま体を浴びせる荒技を披露すると、グラジエーターが田中に椅子攻撃。ひるんだ所をクレディブルがフォールの体勢に持ち込む。これを何とか返した田中だったが、今度は黒田が捕まった。勢いよく放送席前まで突き落とされると、サブゥーが長距離フライトを敢行。フラフラの黒田に突っ込んでいく。

 しかし、混戦模様のリング上では、一瞬の隙を突いて金村がクレディブルの脳天に竹刀を振り下ろし、すかさず田中がローリングエルボーを炸裂させ、そのまま片エビ固めでカウント3を奪取。“過”激戦の日米対決は日本人組に軍配が上がった。

 試合後、金村はブリブラダンスをやろうとするが、田中がこれを激しく拒否し、花道へ引き上げる。すると、黒田もこれに従い、リングでは金村1人が踊るという構図に。幕引きは複雑な結果となった。


第4試合

5分46秒 ラリアット→片エビ固め

 2.29両国大会では不甲斐ない試合をしてしまった小笠原ゼブラは、あれから毎日コスチューム姿でトレーニング、さらには払沢の滝で寒中水泳を行い、修行を積んできた。しかも前回同様、映画「ゼブラーマン」主演の哀川翔から花束を渡される。

 そして誰もが驚いた長州力の「ハッスル」参戦。試合前の会場には「何がやりたいんじゃ、コラ!」と叫ぶ長州の姿が何度も映し出され、まるでハッスルに対する長州の問いかけのように聞こえる。昭和のストロングスタイルの象徴でもある長州が、新しいプロレスを標榜する「ハッスル」の舞台に足を踏み入れる。

閉じる トップバッターをかってでたのは何と長州。しかもいきなり星川にリキラリアットを決める。予想だにしていなかった試合展開に観客もあっけに取られる。タッチを受けた石井はお手本のようなドロップキック、そしてコーナーのゼブラーマンにもエルボーをお見舞いする。ここまでやられっ放しだった星川はチョップの打ち合いから、フライングメイヤー。石井の顔面に低空のドロップキックを決め、スリーパーで締め上げる。しかし石井はそのまま星川をリフトアップして、長州直伝のバックドロップを見せる。ここで再び長州がリングイン。すると今度は早くもサソリ固め! 自分の必殺技を惜しみなく出していく。ゼブラーマンのカットインを阻止する石井。長州には指一本触れさせないといった感じで、長州をサポートする。しかし星川も石井の串刺しラリアットを受けながらも、鋭いキックで反撃し、ピンチを切り抜ける。ここでようやくゼブラーマンにタッチする。この日、初めてリングに上がったゼブラーマンはミドルキックからローリングソバット。コーナーの長州に「長州、見てろよ」とアピールしてからバックドロップと、積極的に技を出していく。得意の空手殺法が冴えるゼブラーマンは、ロープに飛んだ石井に、待ってましたと踵落としを決める。更に星川とのサンドイッチ式のソバットとタッグチームとしても息のあったところを見せる。星川が石井を場外に落とし、ゼブラーマンのトペスイシーダへと絶妙のお膳立て。最大のチャンスを迎えたゼブラーマンは、パンチの連打から必殺のゼブラーローリングパンチ。しかし必殺技であるにも関わらず石井は倒れない。ゼブラーバスターでとどめを刺そうとするが、逆に石井に強烈な垂直落下式のブレーンバスターを喰らってしまう。そして遂に長州がリングイン。ゼブラーマンと肌を合わせることになる。しかし長州は石井との合体技でバックドロップを決めると、一気にリキラリアット! まともにこれを喰らったゼブラーマンは立ち上がることができなかった。

 プロレスラーとして貫禄を見せた長州は勝ち名乗りを受ける前に、すぐにリングを降り、花道を歩くことなく、控え室へと去っていった。華やかなハッスルの舞台で最短距離の勝利を目指した長州。ゼブラーマンとのマッチアップでも容赦なくラリアットを叩き込み、わずか数十秒で終わらせてしまった。長州は最後まで自分のプロレスを貫き通した。

 一方、2試合連続でピンフォール負けを喫してしまったゼブラーマン。必殺技を失敗するなど、修行の成果を見せられなかった。「今度こそ、白黒つけるぜ」とマイクアピールしたものの、自らの手で白黒つけられる日はいつになるのだろうか…。


第3試合

12分06秒 横入り式小包固め

 “プロレスの教科書”を掲げる大谷が、小島をタッグパートナーに指名し、ローデスとその息子・ローデスJr.を相手に、世界のプロレスを体で学ぼうという第3試合。まさに“日本VS世界”の教科書対決となった。

 最初に花道に姿を現したのは大谷・小島組。お馴染みの“火祭り刀”ポーズを決めると、小島は観客席を経由してリングイン。気合充分の様子だ。続いて登場したローデス&ローデスJr.組は、貫禄充分にゆったりと花道を歩く。

閉じる まずは小島とローデスJr.がぶつかった。パワー溢れる巻上げ合戦から、小島がコーナーからグイッと突き出した大谷の足へローデスJr.の顔面を叩きつける。すかさず大谷がリングへ入り、小島と連携してWエルボー。さらに小島がセントーン、続いて大谷がボストンクラブとローデスJr.を攻め立てる。

 ローデスJr.がコーナーへ振られると、今度は父親がリングへ。だが、大谷はローデスを捕まえて、「ジジィこの野郎!」と言いながら腕を顔面に擦りつけ小島にタッチ。だが、ローデスは小島を倒し、顔面を掻きむしる老獪なラフファイトを見せる。何とか脱出し、再び大谷がリングインするも、ローデスは得意のエルボーを放ち、自軍コーナーへ誘導。Jr.と交代する。しかし、大谷はバックドロップでJr.を放り投げて小島にタッチ。小島は逆水平乱れ打ちからJr.を倒し、いつもの「いっちゃうぞこのヤロー!」をシャウト。トップロープからのエルボーをお見舞いする。

 しかし、今度はJr.が反撃。足を掴んで小島の顔面をロープ最上段へ叩きつけると、返ってきた小島の背中にヒザ剣山。さらに同じ技でコーナーにも顔面を沈めさせる。ここでローデスが入ってくると、エルボーから四の字固め。さらにカットに向かった大谷をJr.が四の字固めに捉え、リング上で親子四の字競演が展開される。

 徐々に押し始めるJr.だったが、起死回生のコジコジカッターが炸裂。コーナーでじれにじれていた大谷がリングへ入ると、得意の顔面ウォッシュでJr.のペイントを削り落とす。続けてコーナーへ振り、ビックブーツを放つが、逆にJr.からビックブーツで返礼をされ、フォールの体勢に。だが、小島がこれをカットし、攻勢に転じた大谷はグラウンドでJr.の首を絞め上げると、リングに入ってきたローデスは小島がスリーパーで阻止。今度は元新日本プロレスのコンビによる競演となった。

 小島とローデスが場外へ転戦。リング上では脱出したJr.が大谷をコーナーへ磔にし、股間へキック、次いで裏DDTを放つ。そしてブレーンバスターへ移行するが失敗。大谷はすかさず二ールキックを一閃させ、後ろからリングへ戻った小島が力強いラリアット。倒れたJr.を大谷が抑え込み、ピンフォール勝ちを収めた。


第2試合

8分35秒 ノーザンライトボム→片エビ固め

 日本ではコンビを組む二人。頭脳プレイを駆使する“”策略男爵”コリノとイス攻撃を中心とする“謀略公爵”アンダーソン、まるで水と油のファイトスタイルを持つ二人が、島田プロデューサーの期待に沿ったアメリカンプロレスの真髄を見せることができるか。

閉じる 観客からの声援は意外にもアンダーソンの方が大きい。これに対してコリノは「やれやれ」といった表情を見せる。アンダーソンのショルダーアタックをかわして、逆にショルダーアタックをお見舞いするコリノ。そのまま場外に落ちるアンダーソンを見て「アタマイイ」とアピールする。アンダーソンはここぞとばかりにイスを拾い上げ、コリノに殴りかかっていく。しかし“策略男爵”が簡単にこれをくらうわけがない。イス攻撃を空振りさせると、そのイスをアンダーソンの首に挟んで、リングの中からスライディングキックを敢行する! ところがこれはアンダーソンのフェイントだった。飛び込んでくるコリノのタイミングを見計らって、コリノを自爆させる。“策略男爵”顔負けの頭脳プレイを見せたアンダーソンは、コリノの右腕を集中攻撃。特に右腕をイスで挟んでそのまま踏みつける非情な攻撃には、観客も目を覆ってしまう。右手を使えないコリノは左手でしかチョップが打てず、不利な戦況を打破できない。ようやくDDTのチャンスを掴むものの、「ハシモト、バカッー!」のパフォーマンスが長すぎて失敗に終わる。さらにアンダーソンの顔面パンチでダウンカウント9とKO負けのピンチを迎える。ここを勝機と見たアンダーソンは「オガワ、モットバカッー!」のコールと共にSTOを仕掛けるが、頭脳プレイはコリノの方が一枚上手だ。それまで右腕をかばっていたのが嘘のような鋭いカウンターでSTOを決める。そこからコリノはトラースキック、そしてスイング式のブレーンバスターと連続攻撃。アンダーソンのスリーパーをローブローで切り抜けると、もがくアンダーソンをイスに座らせて、何と長州のモノマネをしながらリキラリアット! 一度は受け止められてしまうものの、エルボーで弱らせておいて、2度目をクリーンヒットさせる。そして最後はノーザンライトボムでコリノがピンフォール勝利を収めた。

 試合後にはタッグパートナーらしくノーサイドと言わんばかりにガッチリと抱擁。現在タッグチャンピオンの二人は解散した炎武連夢のポーズを決め、花道を後にした。


第1試合

16分45秒 フロッグスプラッシュ

 2004年最初の衝撃「ハッスル1」から2カ月、様々なドラマを予感させる“プロレス改革”「ハッスル2」がいよいよ幕を開けた。

 リングの真上にはミラーボール、会場にはソウルミュージックが流れ、あたかも70年代ディスコのような雰囲気が横浜アリーナにたちこめる。さらに、小川が招待したという富岡高校の生徒の一団も姿を見せ、ビジョンに映し出されたカップルはキスをし、3月生まれのお客さんにはバースデーケーキが贈られるなど、テンションは一気に急上昇していく。

 そんな空気の中、いよいよ第1試合が幕を開けた。先に登場したのは、カズ・ハヤシとレオナルド・スパンキーの2人。美女を横にはべらせ、入場口で“タイタニックポーズ”を決める。対照的に、続いて入場したLowki・ホミサイド組は野性味タップリに猛々しく花道を歩いていく。

閉じる まずはスパンキーとホミサイドが激突。華麗なロープワークを展開し、まずはお互いの出方を伺う。続いてリングインしたハヤシとLowkiも素早い攻防を展開。Lowkiはコーナーでスパイダー式の腕ひしぎを見せれば、ハヤシはロープから走りこんで打点の高いドロップキックをお見舞いする。

 最初にコンビネーションを見せたのはハヤシ・スパンキー組。ハヤシはスパンキーを呼び寄せ、2人でLowkiにエルボーを食らわせる。このままペースを掴むかと思われたが、今度はLowkiとホミサイドががスパンキーを捉える。ホミサイドはスパンキーをブレンバスターの形で高々と抱え上げると、長い滞空時間からリングへ叩きつける。スパンキーはなんとかタッチで逃れようとするが阻止され、グラウンドで締め上げられる。さらにホミサイドはトップロープから雪崩式のダブルアームスープレックス。ここでフォールに入るホミサイドだったが、スパンキーは何とか返す。ならばと同じくトップロープからダイビングを敢行したホミサイドだったが、スパンキーが体を翻してたために自爆。スパンキーはフラフラになりながらもコーナーへ逃れてハヤシとタッチする。

 ハヤシは、積もり積もったテンションを一気に爆発。2人を場外へ蹴散らすと、ダイブを試みる。先に飛んだスパンキーは捕まってしまったが、ハヤシはダイブ成功。リングに戻り、ハヤシとLowkiが対峙する形に。Lowkiは必殺のキークラッシャーを放つがハヤシがこれを堪え、代わったスパンキーが、Lowkiを押さえ込む。Lowkiは脱出するとホミサイドにタッチ。スパンキーをパイルドライバーで捕まえたホミサイドは、「ヤッチャウゾ!」という叫びと共にえぐい落とし方でリングにスパンキーの頭を食い込ませる。さらにドラゴンスクリューからSTFへと繋いでいくが、ここでハヤシがカット。続いてスパンキーがボディプレスを放ち、フォールへ。Lowkiの救援は間に合わず、見事カウント3を奪った。イケメン対野獣の戦いは、イケメンに凱歌が上がった。