ハッスル通信

12・30『ハッスル・マニア2008』開催記念企画!
ハッスラーに聞く“親子愛”とは? 【天龍源一郎編】

2009年1月3日

2008年最後にして最高の大一番、12・30『ハッスル・マニア2008』(有明コロシアム)も無事大成功! メインハッスルでは、“モンスターK”川田利明&川田父vsグレート・ムタ&ボノちゃんという“究極の親子対決”が実現し、両親子が証明してくれた“親子の絆”には、日本中が多くの感動に包まれた。そんななか、“ハッスラーたちが語る「親子愛とは何か?」”シリーズも、ついに今回でラスト! 有終の美を飾ってくれるのは、マニアのリングで、全国の中高年に勇気と感動を与えてくれた“ハッスル大将”天龍源一郎だ! 天龍が語る“親子愛”とは、はたして……!? それでは、ど〜ぞ!


■天龍源一郎(ハッスル軍)
「親は口うるさく言うんじゃなく、大事なところでピシッと子供に意見を言えるほうがいい」

――本日は、“親子愛”について、ぜひご教示いただければと。
天龍 それは壮大なテーマですね(笑)。まあ、嶋田家の場合は、俺が13歳で相撲の世界に入っちゃったから、親子関係っていうのは、すごい希薄なだったかもしれませんね。親は愛情を持って育ててくれたかもしれないけど、俺のなかでは、インパクトとして残っているものがあまりないんですよ。田舎が農業ってこともあったから、とにかく働くことが大事でしたからね。
――ご家庭は、専業農家だったんですか?
天龍 いや、兼業ですね。ウチの親父は、日本専売公社(現・日本たばこ産業株式会社)で働いてたんですよ。だから、おふくろと、じいちゃん、ばあちゃんが、農家をやっていて、休みのときは親父が手伝うっていう感じでしたね。
――では、天龍さんも家のお手伝いをされたりとかは?
天龍 農業の手伝いは、大きくなってからですね。ガキの頃は、遊ぶのが仕事でしたから(笑)。
――友達とやんちゃしたりとか?
天龍 そうですね。暇を見つけては遊びに行って、そのたびに親父に怒られてましたよ。「お前も、家の仕事をもっと手伝え!」って(笑)。
――お父様は厳しい方だったんですか?
天龍 厳しかったですよ。俺が長男だったから、すべてをしつけたいっていうのと、嶋田家の意を受け継いだ長男になってほしいっていうのがあったんで。
――例えば、どういう部分で厳しかったんですか?
天龍 とりあえず、家の仕事を手伝えとか、あとは礼儀ですよね。それと、極端な話だけど、NHKを見るのはOKだけど、民放はダメとか。あるいは、小説を読むのはOKだけど、漫画はダメとか(笑)。
――それは、子供にとってはツライものがありますね。じゃあ、勉強なんかについても?
天龍 そうですね。「予習、復習はしっかりやれ!」っていうのは、よく言われてましたね。だから、言われた通りに真面目に勉強をやってたんですけど、農業が忙しくなってきたら、「お前も手伝わんかい!」って、しょっちゅう怒鳴られるんですけどね(笑)。でも、考えてみれば、ウチの親父は、そのとき30歳手前ですからね。
――良かれと思って真面目に勉強してたのに(笑)。
天龍 だから、その当時、昭和30年代っていうのは、“子供は親の意のままに”っていう時代だったんですよ。
――ちなみに、お母様のほうは?
天龍 親父が厳しかったぶん、おふくろは優しかったですね。俺が何かやりたいことがあれば、まず先におふくろに話してましたからね。で、おふくろがその旨を親父に伝えるという。
――お母さんがお父さんの説得役になるわけですね。
天龍 でもまあ、間に入って大変だったと思うんだけどね。俺は勝手なことばっかりやってる長男だからね(笑)。
――では、天龍さんが13歳で角界入りするとなったとき、ご両親はどういった反応だったんですか?
天龍 やっぱり親父は猛反対でしたね。相撲は好きだったんですけど、やっぱり一家の長男が家督を継がないで、他の職業に行くっていうのは難しい時代でしたからね。それで結局、親父はダメってことになって、おふくろは「あなたがそんなに望むなら」っていうニュアンスでしたけどね。
――お母様は賛成だったんですね。
天龍 だけど、最終的には「お前はどうしたいんだ?」っていう話になって、「僕は、相撲をやりたい!」って親父に言ったんですよ。
――まだ、天龍さんも13歳ということで、ダメならまた家に戻ってくればいいっていう考えもあったんですかね?
天龍 それはあったでしょうね。でも、相撲の世界に入ってからは、相撲を辞めて家に戻るっていう話を親父にしたら、「いまさら辞めて、戻って来るなんて認めないからな!」って突き放されましたよ。
――でも、天龍さんがどんどん昇進されていくことによって、お父さんも喜んだんじゃないですか?
天龍 いや、それが、周りの噂ではそういうことは聞くんですけど、俺の前で親父はそんなそぶりはまったく見せませんでしたね。だから、いまだに「お前が相撲に行って、嫌な思いはしたけど、楽しい思いをしたことは一回もない」って親父は言ってますよ(笑)。
――13歳で親元を離れてから、相撲の世界に入ったことで気付いたことはありますか?
天龍 相撲部屋に入ったら、自分と同年代の連中がいっぱいいるじゃないですか。すごく兄弟が増えたような感覚だったんですね。自分は中3で入ったけど、周りは中学を卒業してから入って来るのがほとんどだから、自分よりも2つ、3つくらい上じゃないですか。そうすると、兄が頑張ってるのに、俺も頑張らなきゃって勇気付けられましたよ。
――同志でもあり、ライバルでもあるわけですからね。
天龍 だから、26歳になって相撲を辞めるまでの13年間っていうのは、辛抱して頑張ってこれたと思うんですよ。励ましたりとか、励まされたりとかっていうのもありましたからね。そのときに、漠然と思ったのが、親は口うるさく言うんじゃなくて、大事なところでピシッと子供に意見を言えるほうがいいなと思いましたね。
――締めるところは、ピシッと締めると。
天龍 でも、これはね、口で言うのは簡単だけど、やっぱり我が子供のこととなると、口うるさく言いたくなるのが、親っていうもんなんですよ(笑)。それを小言と感じるか、注意と感じるかは、受け取る側の考え次第ですけど。
――それでは逆に、天龍さんのお子様との接し方についてお伺いしたいのですが、お子様は、ハッスルファンならすでにご存知の紋奈(あやな)さんひとり?
天龍 そうです、ウチはひとり娘です。
――ひとり娘だと、父親として何かと心配なのでは?
天龍 まあ、心配はしますけど、もしなんかあったときは、親の育て方が悪かったってことで、子供に責任を押し付けるようなことはありませんよ。ウチの娘はいま25歳なんですけど、「嶋田家のために、お父さんが頑張って働いてくれてる」って娘に言われると、やっぱりうれしいですね(笑)。
――それは素晴らしいですね。
天龍 それは、こっちがそういうふうに教えたとかじゃなくて、たぶん、プロレスラーっていう職業だから、娘にも「お父さんは、大変だな」っていうのがわかりやすく伝わっているからだと思うんですよね。それでちゃんと理解してくれたと思うんですよ。
――お父様が厳しかったっていうことで、お子様に対する接し方はどうでしょう?
天龍 ウチの娘には、「好きなことをやって、後悔のない人生を送ってもらいたい」っていうのが本音ですよ。後になって後悔するような人生だけは、送ってほしくないですね。それは娘に限らず、後輩とか、あとはWARを作ったときとかもそうでしたけど。
――今年7月以降、天龍さんが大スランプに陥られたとき、紋奈さんから叱咤激励を受けましたよね。普段も、紋奈さんかキツイ一言を言われたりとかは?
天龍 それは、よく言われてますよ。「そんな小難しい顔をしないでよ」とかね(笑)。まあ、いま思うと、いつも家族には、天龍源一郎として接してきてたんだよね。外にいても、家のなかにいても、天龍源一郎だったんですよ。だから、嶋田源一郎っていうのは、家族の前では一切見せてなかったんだよね。
――それは、天龍さん自身が意識して、されていたことなんですか?
天龍 俺はそんなつもりじゃなかったんだけどね。でも、プロレスを生業にしてメシを食ってるっていう自負が、家族にそう感じさせていたんでしょうね。いま振り返ってみると、本当に嫌な時代でしたよ(笑)。
――改めて振り返ってみると(笑)。
天龍 でも、7、8年ぐらい前からかな。家のなかでは、嶋田源一郎でいるようになったのは。やっぱり家にいるのが一番落ち着きますよ。昔は、家庭にいると、周りの仲間が好き勝手なことをやってることに、「自分だけが取り残されるんじゃないか?」って思って、焦ったんですよね。酒を飲みに行ったり、とにかく外に出ないと天龍源一郎じゃないっていう感覚だったんですよ(笑)。でも、いまはそれも気にならなくなりましたね。だから逆に、いまはもっと家族といろんなことを語りたいって思いますよ。
――そこで伺いたいのですが、いい親子関係を保つコツというのは?
天龍 まあ、信頼関係でしょうね。何かがあれば、親の育て方が悪かったってことになるんだろうから。
――では、天龍さんが紋奈さんに望むこととは?
天龍 さっきも言ったように、好きな人生を送ってほしいというのは、常々思ってますよ。だから、彼女はお店(天龍さんがオーナーを務める鮨処『しま田』)の手伝いをいろいろやってくれてるんだけど、そこで拘束したくないんだよね。「もっと好きなことがやりたいんであれば、やりなよ!」って思うんだけど、彼女も大人になったのか、俺がそう言うと、「私がいなきゃ困るでしょ!」って逆に怒られちゃうんだよね(笑)。
――天龍さんが怒られますか!(笑)。
天龍 みなさんがハッスルで観た、あの通りですよ(笑)。でも、俺がいままで好きなことをやらせてもらったぶん、今度は俺が娘にヘルプしてあげるよっていう気持ちはありますよね。
――余談なんですが、紋奈さんと一緒にお出かけされたりとかは?
天龍 しますよ。俺から誘って、二人で飲みに行ったりとかね。まあ、娘のなかで溜まってるストレスとかを、俺がガス抜きしてやってるっていうのもあるんだけど。っていうのも、あるとき、娘が家に帰ってきてから、店のことで愚痴をこぼし始めたんですよ。それを聞いて、俺が「店をやるってことは、そういうことなんだから、いちいち愚痴をこぼすなよ!」って叱ったんだよね。
――働くとはそういうもんだと。
天龍 そうしたら、娘が「じゃあ、私は家に帰ってきても、愚痴もこぼせないの?」って言って泣いちゃったんだよね。そのときに、「ああ、俺は、言っちゃいけないことを言ってしまったな」って。俺も耐えてきたから、みんなも耐えれるだろうと思ってたんだけど、俺はそのぶん酒を飲んだり、リングで暴れたりしてたから、ガス抜きができてたってだけなんだよね。
――そこに気付けなかったと。
天龍 だから、逆にそれを言われてから、娘もそうだし、女房(奥様)もそうなんだけど、気晴らしが大事だなって思うようになったんですよ。まあ、自分で言うのもなんだけど、俺も偉くなったってことだよね(笑)。
――ちなみに、天龍さんに似て紋奈さんも、かなり飲まれるんですか?
天龍 俺は娘に、「雰囲気で飲んで、酔っぱらって醜態を見せるぐらいだったら、自分で飲んでみて、これ以上飲んだらヤバイなっていうのを覚えなさい。だったら、お酒を飲んでもいいよ」と言ったんですよ。それで、女房も、娘が酒を飲むことをOKしてくれたんだよね。
――つまり、お酒の飲み方を教えてあげようとしたわけですね。
天龍 そうしたら、娘は、もう底なしでめちゃくちゃ強いんだよね。余計なことを言わなきゃ良かったって、ホント後悔してるよ(笑)。でも、飲みに行こうって誘うと、付き合ってくれるだけうれしいよね。

関連人物:天龍源一郎
関連大会:ハッスル・マニア 2008
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