「おい! 老いぼれ!! 何しに来やがったんだよ!」
まさかのハードゲイヴァージョンの天龍源一郎出現に、騒然となった後楽園ホールにあの御方の声が響き渡った。バルコニーに高田総統の登場である。リング上には天龍がどっしりと構え、高田総統を見上げた。当然、場内には「そーとー! そーとー!」とコールが沸き起こるが、総統は早々に「もういいよ!」とご機嫌斜めの様子。
「我こそが高田モンスター軍総統、そしてハッスルの偉大なる支配者・高田だ!」と珍しく何の前振りもなく挨拶した総統。すかさず沸き起こる「そーとー! そーとー!」コールを「いいよ! いい! もういいんだよ!」と自ら遮ってしまう。
「それどころじゃないんだよ! 見ろ、リング上を! 大変なことが起こってるよ!」と天龍の変貌っぷりに総統もかなり驚いたようだ。動揺を隠せない総統に向かい、天龍は“バッチコーイ”や“腰フリ”などのハード芸を連発して挑発する! 爆発する天龍コールに総統は喋るタイミングを掴めないほど。
「おい、老いぼれ! 貴様〜っ! 何をしているんだ?」とあっ気にとられる総統。「大丈夫か? とうとうボケが始まっちゃったようだな。笑っちゃうよな。だってそうだろう? ハッスル・エイドで失態を犯し、私の顔に泥を塗ったのはついこの間だよ。分かるだろう? まともな脳ミソを持っているなら、恥ずかしくて、申し訳なくて、二度とハッスルの敷居をまたぐことが出来ないんじゃないのか? う〜ん? にもかかわらずだ! 私に牙を剥くとは、貴様、正気の沙汰かよ? しかもだ! 『HUSTLE AND ROMANCE』って! こんの野郎〜! 本当にこっち(頭)大丈夫か?」
天龍のハードゲイスーツの背中に書かれている、かつて天龍が率いたプロレス団体の名前『WAR』の由来となった『WRESTLE AND ROMANCE』を髣髴させる文字を見逃さなかった高田総統はすかさず突っ込む! すると天龍は自らハードゲイマスクを脱ぎ去り、「おい、高田!」と総統を呼び捨てだ。
「天龍源一郎はな、まだまだ老いぼれちゃいねぇんだ、この野郎! この前の借り、きっちり落とし前つけてやるからな、腹くくっとけ、この野郎!」と高田総統に対して宣戦布告! 因縁の“WAR”勃発!
反旗を翻した天龍に一瞬ビビってたじろいでしまった総統だが、すぐに威厳を取り戻してニヤリ。「ほ〜う、たった1ヵ月の間に随分と面白くなってきたじゃないか! 老いぼれよ! う〜ん!?」と総統が天龍の言葉を受け止め、いい雰囲気になってきた所で割って入ったのは川田だった。
「大将! 大将の芸の引き出しにそんなもんがあったなんて。ある意味、俺、正直ちょっと悔しいな」と緊張感をぶち壊しだ! 総統も思わずズッコける。
「おい! なんだ、その返しは? 人が一生懸命に喋っているのに。ヤツは裏切り者だ! 褒めてどうすんだよ! けなせよ! けなせ!」総統の怒りを買った川田は、とってつけたかのように「この野郎! そんなカッコして調子に乗りやがって、この野郎!」と叫ぶ。いささか無理はあったが、総統は「そうだよ!」と川田の言葉に満足そう。しかし…
「お前! そっちがハードゲイで来るんだったら、俺はふんどし締めて太鼓叩いちゃうぞ!」と川田は大晦日ネタ。それに対して「ドン! ドン! ドドン! ……って、おい!」とついノリ突っ込みしてしまう総統!
「貴様、私に恨みであるのかよ? そうじゃないだろう。あるだろう、もっと普通のやつが。お前をぶっ潰すぞ! とか、お前を病院に送り込んでやる! とかよ。そういうスタンダードなフレーズがあるだろうよ! なんで貴様はイチイチ、ネタ勝負に持ち込もうとするんだ?」と川田にキレる総統だった。
「話を先に進めよう。頭が痛くなってきた」と冷静さを取り戻した総統は語り始める。「おい、老いぼれ! 貴様、本気でその態度で私に向かってくるんだな? 考えがある。下々の諸君、コレを見たまえ!」と、総統が指し示した先のビジョンには発表済みの『ハッスル24』浜松大会メインカード『HG&坂田亘VSスコット・ノートン&アン・ジョー司令長官&ジャイアント・バボ』が映し出される。場内はシーン……。「ノーリアクションなんだよ!」ますます怒る総統!
「3日後の浜松大会。メインをこのカードで発表していたが、気が変わった。老いぼれ! そんなにハッスル軍の連中とくっつきたいのなら、そこでボーッとしている小粒の青春コンビと組めよ。な? ハッスル・エイドの厄払いは、浜松で一気に晴らしてやる。おい、老いぼれ! 老いぼれ!! 老いぼれ!!! 逃げるな、逃げたら許さんぞ!」と、『HG&坂田亘&天龍源一郎VSスコット・ノートン&アン・ジョー司令長官&ジャイアント・バボ』の豪華カードをぶち上げた総統。
「それでは諸君、3日後の浜松でまたお会いしようか! バッドラックだ!」と、総統は天龍の返答も聞かぬまま、言いっ放しで会場を後にしてしまった。
ダメージの深かったHGがようやくリング上にカムバック。マイクを持ってハッスル・エイドで激闘を展開した天龍に語りかける。
「天龍さん、ご機嫌じゃないですか! どんなに似合ってるんですか! 今年のベストハードゲイニスト新人賞は、あなたで決まりですよ!」と天龍のハードゲイルックを絶賛だ。すると天龍は「あんちゃん、男はな、覚悟を決めたら、迷わず突き進むんだよ。この通りだ、この前の借りは返したからな。そういうことだよ、この野郎」と言い捨て、リングを去ろうとする。
その天龍をHGが引き止める。「天龍さん! この勢いで我々ハッスル軍に入ってもらえませんか! どうですか皆さん! 3日後の浜松で我々と一緒に、モンスター軍をぶっ潰しましょうよ!」と天龍にハッスル軍入りを薦める。確かに“ミスタープロレス”がハッスル軍に入ってくれれば、打倒モンスター軍へ向けて鬼に金棒だ。
しかし、天龍はHGの言葉に一旦は足を止めるも、そのまま無言で去っていく。その背中に向かってHGは「天龍さん! 待ってますよ! 私は信じて待っていますから! お願いします天龍さん!」と叫んだのだが……天龍は振り向くことはなかった。
「オッサン、一人で美味しいとこどりだな……」と、天龍の鮮やかすぎる変貌ぶりに脱帽の坂田。「しかし、凄いもんを見たな……」と目の前で起こったことが信じられない様子だ。「いやぁ、本当に凄かったですよ。しかも、やる気マンマンでしたからね!」と同意するHG。
「とにかくだ。俺たちはエイドで全勝した勢いを、3日後の浜松で取り戻すんだ。いいな?」と、新生ハッスル軍のメンバーを奮い立たせる坂田。死にそうになっているRGに崔が「RG、お前生きてるか?」と心配そうに問いかけるが、RGは元気なく首を横に振る。かなりのダメージを受けたようで、3日後の浜松大会が心配だ。
坂田が再びマイクを握る。「最後に今日、7月11日はハッスルにとって忘れちゃいけない日だ。この新生ハッスル軍のルーツを辿れば、行き着くのは“ハッスル・キング”橋本真也だ。今日の締めは、天国の橋本さんに捧げるため、皆でトルネードハッスルを決めたいと思う。いいか?」と提案すると、場内からは大きな拍手が沸き起こる。
すると崔が「ちょっと待ってください! どうしてもこのリングに上げたい人がおるんです! 大地! リングに上がってくれ!」と客席にいた橋本真也の長男・大地くんをリングに招き入れる。「紹介します! 橋本さんの長男・大地! そして次女・ひかるです!」と遺族を紹介し、「では、橋本さんがハッスルのために考えました、トルネードハッスルで一緒に締めたいと思います」と提案した。
崔は続いて「おい、大地! おまえからもひと言なんか言ってくれ!」と大地くんにマイクを向けると、大地くんは「皆さん、いつも父を見守ってくれてありがとうございます。自分も、中学を卒業したら何年かかってもプロレスラーになりますんで」と、父の遺志を継ぐプロレスラー宣言! この力強い言葉に客席がどっと沸いた。
最後は坂田が「天国の橋本さん、いつまでもハッスルを見守ってくれ!」と絶叫し、音頭をとっての「スリーツーワン、ハッスル! ハッスル!! トルネ〜ド、ハッスル!!!」で締め括った。
8分45秒 スピンキック
『ハッスル・エイド2007』で全敗し、今大会で逆襲に燃えていた高田モンスター軍だったが、今日もここまで3連敗中……。高田総統の怒りは爆発寸前のようで、「どいつもこいつもしくじりおって! 力負けしたならまだしも…。ことごとく、自分たちで自滅しての負けではないか! おのれ、新生ハッスル軍…。メインこそは必ず叩き潰してくれるわ!」と意気込む。
そんな高田総統の心配をよそに、川田は「総統、俺に任せてください。新生ハッスル軍の連中に、これ以上、好きにさせませんよ」と説得力のあるコメント。
「ほお。モンスターKにしては、珍しく頼もしいじゃないか!」と高田総統は感心しきり。
ふと、『ハッスル・エイド2007』のメインでHGに敗れた“モンスター大将”天龍源一郎のことを思い出した川田は「ところで今、大将は何やってるんですかね? 腰フリごときに負けて、その上、ハードゲイの格好も結局、やらず仕舞いか…。偉そうに大人ぶってたけど、実際は中途半端な男だよ。総統、やっぱり、モンスター軍の2は俺しかいないでしょ?」と高田総統に言ってきかせる。
しかし当の総統は聞いてなかったようで「え?」。
「聞いてなかったのかよ!」と呆れ顔の川田に対し、高田総統は「そんなに2の座が欲しいなら、自分の力で勝ち取ってみろ! もし今日、新生ハッスル軍に不覚を取るようなら、貴様もあの老いぼれ同様、モンスター軍追放にするぞ!」と発破をかける。
「あんなジジイと俺を一緒にしないでくださいよ! 最近、歌しか歌ってないように思われてるけど、俺は歌えて、踊れて、その上、試合で結果も残せるハッスラーですよ! 俺の方が、よっぽど器がでかいってところ、総統にわからせてあげますから!」と勢いよく川田はメインのリングに向かって行った。
閉じる まず登場したのは新生ハッスル軍の坂田亘、HG、RG。続いて、ゴモラ、ノートン、川田がリングインすると、HG&坂田はいきなり突っかかった! リング上ではHGとゴモラがやり合う。
HGがゴモラにPWを見舞おうとすると、ゴモラはパワーで簡単に押しのけてしまう。HGはたまらず坂田にタッチ。
次に坂田とノートンの因縁の対決へ。ここでも体格、パワーなど全ての面で上回るノートンが力でねじ伏せる。坂田がボコボコにされていると、場内からはなぜかRGコールが全開だ。
坂田はミドルキックで反撃したところ、タッチを受けた川田がリングイン。両者はバチバチの張り手合戦を展開する。
オープニングで単独リサイタルを開催出来なかったことで、川田はフラストレーションがたまっているのだろう。坂田に対し、猛烈な攻撃を仕掛けていく。
HGは援護射撃に出たが、返り討ちに合ってしまった。坂田に続いてHGも倒れ、リング上に残ったのはRGのみ……。
ビビリながらも気合を入れたRGはでゴモラ&ノートンに立ち向かうもコテンパンにやられてしまう。それならばと、故・橋本真也さんが憑依したかのように両腕で十字を切ったRGは水面蹴りを出したのだが、意味無し。
ノートンのチョップ一発で瀕死状態となったRG。危機一髪のところでHG&坂田がドロップキックでカットイン。そして連携プレーでゴモラをブレーンバスターで投げ飛ばした。
リング上に残ったのは川田一人。しかし川田の勢いは半端なく、坂田とHGを一気に蹴散らすと、またRG一人となってしまった。
RGが川田の顔面に張り手を見舞うと、川田はスピンキックで応酬。この攻撃で完全に気を失ってしまったRGを踏みつけるかたちで、川田があっさりと3カウントを奪い勝利。
試合終了のゴングが打ち鳴らされるも、リング上は大荒れ。ゴモラ&ノートンは新生ハッスル軍をボコボコに痛めつける。
ハッスル軍大ピンチのそのとき! 会場に『サンダーストーム』が流れ、一人の男がリングイン! ハードゲイのコスチュームに身を包んだ天龍だ! チョップでモンスター軍を一気に蹴散らすと、天龍はHGばりに腰を振り、リング上で力を誇示するのだった。するとその時、いつものあの声が……。
先日の『ハッスル・エイド2007』で、M字パワーの源である“秘境”にグレートムタから毒霧を吹きかけられ、無残にも失神してしまったインリン様。あれ以来姿を見せないこともあり重症とも囁かれていたが、その後の状態は――?
『ボレロ』の優雅な旋律に乗って姿を現したインリン様。今日は黒を基調としたシックなデザインに、ゴールドのスパンコールをあしらったゴージャスな出で立ちだ。一見、試合の後遺症も無く、いつもと変わらぬ美しさでご機嫌麗しく見えるのだが…。
リングインしたインリン様は、開口一番「相も変わらず暇でモテナイ、ハッスルファンの諸君。私が愛と美と闘いの女神・インリン様よ!」といつものようにご挨拶。すかさず二等兵が「どいつもこいつもむさ苦しい顔しやがって! こんな小汚い小屋にわざわざインリン様がおいでくださったんだ! 感謝の気持ちを込めてインリン様と叫べ!」と観客に要求。もちろん観客は「インリン様〜!」の大合唱だ。
その反応に満足気なインリン様は「私としたことが、『ハッスル・エイド』では少々油断したわ。一部では重症説も流れていたけど、全然平気よ。あのくらいのダメージ、どうってことないわ」と頼もしい発言、まさに「母は強し」だ。司令長官も「その通りですよ!“偉大なるM”インリン様があの程度のことで、くじけるわけがありませーん! ねぇみなさん?」とインリン様を崇め、場内も拍手で応える。
続けてインリン様は「心配をかけたお詫びと言ったらなんだけど、今日は、私から皆にM字ビターンをプレゼントするわ」と出血大サービスなお言葉。場内は歓喜の渦だ! 二等兵も「お前ら今まで生きてきてよかったな! インリン様が直々にM字ビターンをプレゼントして下さるぞ、拍手だ!」と観客を煽る。
しかし次の瞬間、「島田、アン。早く準備を…ううぅぷ」と、インリン様が口を押さえながらうずくまってしまう! これには司令長官も二等兵も「インリン様、どうかなさいましたか!」と慌てふためくばかり。「大丈夫。ちょっと、気分が悪くなっただけよ」と気丈に言うインリン様だが、どうにもこうにも御容態が宜しくなさそう…。
「インリン様、も、もしや“つわり”ですか?」――司令長官の衝撃の言葉に、非常事態を表すかのようなBGMが鳴り響く。毒霧で受精!? パパはムタ!? 前代未聞の展開に驚く二等兵は「ご懐卵…? 卵? ええーっ!!!! ふ、2人目?」と畳み掛けるように問いただす。インリン様は「そんなんじゃないわ! 早く……M字…」と否定してM字ビターンを試みようとするも、再び吐き気を催してうずくまってしまう。
司令長官が「インリン様、いけまセーン! インリン様をホスピタルへ! M字ビターンは中止デース!」と取り乱せば、二等兵も「大変だー!! 救急車! 救急車!」とハプニング状態。司令長官と二等兵に抱えられ退場していくインリン様。一体インリン様の体にどんな異変があったのか? 本当に新たな生命をその身に宿したの…? 続報を待て!
8分2秒 那智の滝
ハッスル軍に新たな助っ人が参戦。その名も、その名もお笑い芸人・アントキの猪木! 今までにハッスルのリングには2度上がった経験を持つものの、試合経験ゼロであるド素人のこの男が、なぜ試合に臨むのか?
先の会見では「高田総統は『モンスター軍こそ最強』だと。しかしながら『アントキの猪木こそ格闘技の最強であること』を証明するために挑戦します!!」と鼻息荒く参戦を宣言。たしかに、伝説の“あの男”に姿かたちこそ酷似しているが、その実力まで似ているのかどうかは疑わしいかぎり。
そんな素人に宣戦布告されたモンスター軍は、ナメられてなるものかとばかりにアン・ジョー司令長官が、ジャイアント・バボを率いて迎え撃つことに。猪木のパートナーは『ハッスル・エイド2007』でクロマティをサポートした崔領二が務めることに。 はたして猪木は、試合後に勝利の「1!2!3!ダー!! 」を披露することはできるのか!?
ところ変わってモンスター軍控え室、試合前の司令長官とバボの姿が。
「何がアントキの猪木ですカ! しゃべりは、モノマネできても、リングの上で猪木になりきれるわけがありまセーン! ミーがリングの上で、奴の素を暴いてやりマース!」といきり立つ司令長官。
すると総統が「油断は禁物だ! あのアントキの猪木という男。一見、ただの売れない芸人に見えるが、実は、土浦市役所職員という安定した仕事を捨て芸人の道へ。さらに、400万もの借金を合コンの仲介料で返済したという過去を持つ。この無謀な行動力。こういう奴こそなにをしでかすかわからん…心してかかれ!」と、とっておきの裏情報をアドバイスとして告げる。
そしてバボに対しては「今から貴様に“ジャイアントビターン”を行い、対猪木用の戦闘服に変身させる。バボと猪木…BとI…そう、幻のBI対決だ! 絶対に負けは許さんぞ!」とプロレスマニアが泣いて喜びそうな台詞を織り交ぜながら、発破をかけていく。
するとバボが「バボってバレーボールの略やから、BじゃなくてVなんですけど……」とつぶやくが、司令長官は「……総統には黙っておきましょう」と誇り高い総統のことを気遣う。
そんなことも知らずに総統は「なにをごちゃごちゃ言っておる! 行くぞ! ジャイアント…ビターン!」とバボにビターンを注入、するとバボは「アポー!」と、東洋の巨人を彷彿とさせる声を上げた。時空を超えたドリームマッチの行方は――?
閉じる まずは「炎のファイター」でハッスル軍が登場。気合十分の猪木、その目に宿りしは闘魂の炎! 続いてモンスター軍、「王者の魂」の悠然な旋律の中をバボが、股上の深い赤いパンツで貫禄のリングイン。
そしてコールをするのはハッスル軍が田中リングアナ(元・新日本プロレス)、モンスター軍は木原リングアナ(全日本プロレス)。この徹底した作り込みが、否が追うにも世紀の対決の期待を煽り立てる。
先発はバボと崔。あまりのバボの完コピぶりに崔も様子見の姿勢。まずはロックアップ、ロープに振られた崔が体当たりをかますと、バボは馬場の生き写しの様に顔をしかめる。
続けて組み付いた両者、今度はバボが首投げで崔を倒して大きな足で踏み付け攻撃、これには崔も苦痛の表情。そしてバボが脳天唐竹割りを繰り出していけば、崔もエルボーで反撃を試みる。崔はロープの反動を利用してバボに飛びこむが、待っていたのは16文キック! バボの完全な馬場ムーブの前に、調子を狂わされてしまったかのようだ。
ここで崔は猪木にスイッチ。猪木はアリキックの連発で身長の高いバボを崩していく。バボに代わってリングインした司令長官は「このニセモンが!」と叫びながら猪木に打撃を見舞っていくが、負けじと猪木も気合のこもったナックルパートで応戦。続いてロープに飛んだ司令長官の足を取ると、インディアンデスロックの態勢に。
そして崔に「ケンゴ!」と呼びかけてタッチ。どうやらレッグラリアートを得意とする崔を、木村健吾に見立てている様子。崔は司令長官のエルボー&キックで劣勢となるが、ここで猪木がコーナーから「気合を入れろ!」と呼びかけると、見事なバックドロップで司令長官を投げ切る。
しかし老獪な司令長官はすかさずバボをリングに呼び込み、ダブルの16文キックを叩き込んでいく。さらにバボは河津掛けで崔に追い込みをかける。劣勢の崔だったが、バボの巨体をブレーンバスターで豪快に投げ切って反撃開始。負けじとバボもロープに飛んだ崔に逆水平、ジャイアントコブラツイストで締め上げていく。
するとすかさずカットを狙って猪木がリングイン、それを阻止しようとアンも乱入。ここで機転を利かせた猪木は、司令長官を卍固めで捕獲。リング中央でジャイアントコブラツイストと卍固め夢の競演が実現した!
そのまま猪木は弱った司令長官を場外に追い出すと、バボに必殺の延髄斬り、続けてトップロープからのニードロップ! そして最後は崔がトップロープからダイビングフットスタンプ「那智の滝」で3カウントを奪取した。
試合後、崔に起こされた猪木はマイクを握ると「今宵はプロレスか、はたまた狂言か…」と、先月に旗揚げしたIGFでの本家猪木のエンディングスピーチを唐突にモノマネ。そして少しハニカミながら「あそこのボードに『IGF成功おめでとう』と書いてあるから、オレの用意した台詞忘れちゃった!」とぶっちゃける。
続けて「相変わらずイッパイイッパイ、みっともないとこお見せしてしまいました、頭が朦朧としております」と自嘲気味に満面のアントンスマイル。その不思議なアントンワールドに場内は大爆笑だ。
さらに猪木はなぜか「バボとアン、強くなったなぁ」と初対戦にも関わらず感慨深げにつぶやくと、「また、強靭な肉体を作ってこのリングに上がりたいと思いますが、、どーですかー!?」と絶叫しながらハッスル継続参戦を訴える。もちろん場内は大喝采だ。そして「それでは最後に一発、デッカイ花火を打ち上げるぞー!」と、観客の起立を促すと「行くぞー! 1!2!3!ダー!! 」で、デビュー戦を自らの手で締めくくったのであった。
10分58秒 キンタ●包み
モンスター軍の控え室で島田二等兵はTAJIRIに対し不満をぶつける。
「まったく…。お前らのせいで俺が総統にこってりしぼられたじゃねーか! セレブ(小川)も含めて、旧ハッスル軍の連中は不良債権もいいとこだよ!」
そのまま『ハッスル・エイド2007』のことを振り返った島田二等兵。「TJIARIはインランプを盗まれるわ、インリン様をあんな目に合わせるわ。反省してんのか!」と完全にブチ切れだ。
それを聞いたTAJIRIは「も、申し訳ありませんっ!」とビクビク。
TAJIRIだけではなく、島田二等兵は「お前が、高山&みのるに負けたせいで、モンスター軍の面子は丸つぶれなんだよ!」とACHICHIに対しても怒りを爆発させる。
それを受けてACHICHIは「負けたのは、100%川田のせいだろうが。俺は悪くねーよ」と完全に開き直りだ。
「なんだその態度は! この俺にそんな口利いてタダで済むと思ってんのか!」とブチ切れる島田二等兵に対し、ACHICHIは「お前、そんな偉くねえだろ! そんなことより、今日の俺達の試合はどうなってんだよ!」と自分たちの出番がないことに疑問をぶつける。
そんなゴタゴタ劇の中、ひょっこりと姿を見せたのはモンスター軍入りを熱望している謎のマスクマンのキンターマン&クロダーマンだ。
「またお前らか! 司令長官に、この前の『ハッスル・エイド2007』がラストチャンスって言われたろ!」と完全無視の島田二等兵。
「僕らね、頼む人を間違えてましたわ。アン・ジョー司令長官に頼んだってラチがあきまへん。やっぱり、こういうことはモンスター軍の陰の実力者・島田さんにお願いせんと」とキンターマンはよいしょ作戦に出た。
更には「あの、これつまらないもんですが……。今度、浜松にオープンしたブラジル人パブ『コーヒー豆チクビ農園』の無料券ですわ。今週末、浜松行くんでしょ?」と汚い手を使い始める。
そんなことで動じないかと思いきや、「気が利くな。よし。お前らのことは、俺から総統に頼んどいてやるよ」と島田二等兵は嬉しそう。
大喜びのキンターマンは「さすが、島田さんは話のわかるお人や。あの、モンスター軍に入ったら僕ら、そこのアホの2人より、ええ仕事しまっせ」とACHICHI&TAJIRIに対し挑発的な発言を飛ばした。
「今から入れ替え戦でもやってみるか?」と島田二等兵が軽いノリで提案、島田は軽い冗談のつもりだったようだが時すでに遅し。キンターマン&クロダーマンはいきなりACHICHIとTAJIRIを急襲し、乱闘を始めたのだった。
閉じる ACHICHIとキンターマンはそのままやり合いながら会場に登場。そのすぐ後から現れたクロダーマンも突撃。その隙にキンターマンは会場の売店から長机を持ち出し、TAJIRI&ACHICHIをその机の上に寝かせて、階段の上からダイブを敢行! そのまま勢いに乗る謎のマスクマンは西側に移動し、観客の声援をあおりながらモンスター軍の2人を壁にたたきつける。「もう一丁」コールが飛ぶ中、キンターマン&クロダーマンは攻勢に試合を進める。
リングインしてからも戦況は変わらない。調子に乗るキンターマンは会場にいた観客にコールを要求する。そのコールとは、キンターマンが攻撃したら「キンタマー!」、ACHICHIが攻撃すると「アチチー!」というもの。交互に攻撃が繰り返され、会場は「金玉あちち!」の大合唱! そこは異様な空間となってしまった。
勢いを取り戻したACHICHIはキンターマンを追い込むと、TAJIRIにタッチ。モンスター軍の二人はキンターマンの左腕を捕らえ、ピンポイント攻撃に出た。
キンターマンはたまらずクロダーマンにタッチ! 逆転を見せようとクロダーマンはコーナートップにTAJIRIを固定し、必殺のクロダーマンカッターをお見舞いようとしたのだが……。
TAJIRIは間一髪のグリーンミストで反撃! ここから流れが一気に変わることになる。TAJIRIのトラースキック、ACHICHIの顔面ウォッシュでキンターマンはもうフラフラ。
大チャンスのモンスター軍だったが、思わぬハプニングが起こる。ACHICHIがタッチを受ける際にTAJIRIを「変態!」呼ばわりし、、TAJIRIが「ハゲ!」とののしったのだ。
それを根に持ったACHICHIは、TAJIRIがタランチュラでキンターマンを仕留めにかかろうとするとカット!
ACHICHIとTAJIRIはリング上で大喧嘩をし始める。その隙を狙ってキンターマンはTAJIRIをうまく丸め込み、見事な逆転勝利!
大喜びのキンターマン&クロダーマンとは対照的に、ACHICHIとTAJIRIは罵り合い。完全に仲間割れだ! 怒りの収まらないTAJIRIは3日後の『ハッスル24』浜松大会でACHICHIとのシングルマッチを要求した。
「二等兵の俺に、そんな権限あるわけねえだろ!」と呆れ顔の島田二等兵。
そんな空気に関係なくキンターマンは「あの…。島田さん。僕ら、入れ替え戦に勝ちました。モンスター軍に入れて下さい!」と笑顔でモンスター軍入りをアピールだ。
「俺にそんな権限あるわけねえだろ!」と一蹴した島田二等兵は、さっさと会場から姿を消したのだった。
キンターマン、クロダーマンのモンスター軍入りの結果については、ハッスル公式webサイト、ハッスル公式携帯サイトにて発表しているので要チェック!
7分12秒 超新星プレス
試合前のモンスター軍控え室。
「♪余計なものなどないよね〜…貴様の歌が一番余計だよ! モンスターK! 一瞬『ご本人登場?』って嬉しそうな顔しただろ!? 貴様にはモノマネ芸人・ノブ&フッキーで十分だ! そもそも貴様、そんな呑気に歌っている場合か?」と、今夜のオープニングのリサイタルを受けてか、チャゲ&飛鳥の「SAY YES」を口ずさみながらノリツッコミを入れる総統。
どうやら総統はご立腹の様子だ。傍らには直立不動でうなだれる司令長官と二等兵の姿が。
言うまでも無く、総統が怒り心頭の理由はただ一つ、先の『ハッスル・エイド2007』でのモンスター軍の全敗が原因だ。「貴様ら! よくも私の顔に泥を塗ってくれたな!」――ただ平謝りの司令長官と二等兵の前で、総統の激昂は止まらない。
「今宵の大会は我がモンスター軍の復讐劇だ! ただの一つの負けも許さんぞ! なんだったらな、今から一緒に、これから一緒に、私が殴りに行ってもいいんだぞ〜♪」と、お冠の総統はテンションが上がりすぎて、思わず節をつけて『YAH YAH YAH』のフレーズを口走る始末。
これには「モンスター軍の敗北より、モンスターKに歌を歌われたことの方が、怒りが大きいみたいですよ」と二等兵がボヤけば、司令長官もうなづくばかり。
気を取り直した総統は「“ハッスル・キング フォーエバー”と題されたこの大会。たしかにハッスルの礎を築いたのは“ハッスル・キング”橋本真也であることに間違いはない。しかしだ! 現在ハッスルの支配者はこの私。今宵はハッスル軍の壊滅という形で“ハッスルキング”に、、追悼の意を表明しよう!」と何とも不吉な宣告。
この一戦のキーとなるのは恐・イタコの存在、果たして破壊王の魂はどのような形で降臨するのか!?
閉じる まずは元気良くハッスル軍フレッシュコンビがリングイン、KUSHIDAは破壊王ばりの白いハチマキを客席に投げ込む。続いてモンスター軍が、いつものようにユラユラと心もとない足取りの恐・イタコを先頭に登場。
開始のゴングと同時に、早速イタコに本日最初の憑依! と思いきや、レジェンドレスラーが降臨する前に、KUSHIDAとチエがダブルのドロップキックでイタコを場外追放。リング上はチエとT世、ロープワークの応酬からチエがタイミングよくタックルをぶちかます。
続いて登場したKUSHIDAは、軽やかな動きでU世を翻弄すると、強烈な低空顔面ドロップキックを叩き込む。ハッスル軍が試合のペースを握りかけたように見えたがT世がリングイン、2人がかりでKUSHIDAを捕らえると、ダブルのエルボーを叩き込む。
ここでリングに呼びこまれたイタコに、この日2回目の憑依が! と思いきや、これもチエがドロップキックにより未然にカット。あわれリング下に転落したイタコはノビてしまう。必死に二等兵がタオルで風を扇ぐが、イタコは死に体でピクリともしない。
リング上ではチエがT世とU世に捕まる。コーナーポストに追い詰められるとドロップキック、ネックブリーカードロップをまともに喰らって劣勢を強いられる。なんとか相手の同士討ちを誘ったチエは、2人まとめてアマレス仕込みのタックルで吹き飛ばすパワフルな攻撃。
タッチインしたKUSHIDAは、打点の高いドロップキックでT世をリング外に吹き飛ばすと、U世にはトップロープから角度のあるミサイルキック。続けて、とどめとばかりにブリッジの効いたジャーマンスープレックスを決めるが、これはT世がカット。お返しとばかりにT世はKUSHIDAにネックハンギングボム、続けてチエにはU世と2人がかりで強烈なストマックバスターをお見舞いする。
リング上に取り残されたKUSHIDAをT世とU世が捕らえると、ここでイタコがリングイン。そしてこの日3回目の憑依が! 今度はようやく降臨成功!
すると『爆勝宣言』が場内に鳴り響いた! やはり今日という日を飾るのはこの曲しかないだろう。 “破壊王”が降臨したイタコは、同じモンスター軍で味方であるはずのT世とU世に重爆キック、トラースキック、フライングニールキック、袈裟切りチョップ、そしてDDTと必殺フルコース! さすが“ハッスル・キング”の異名を取った橋本真也、ハッスル軍の正義の気持ちは天国に行っても忘れていないようだ。最後はKUSIDAがムーンサルトプレスでT世からピンフォール勝ち!
そしてイタコは『爆勝宣言』が流れる中、“破壊王”らしく両手で気合を入れたポーズを決めてリングを後にしたのであった。
コールを受けて登場したのは『ハッスル・エイド2007』のオープニングと同じゴージャスな衣装に身を包んだ“モンスターK”川田利明だ。
「ようこそ、ファイティング・オペラ『ハッスル』へ。今さら説明するまでもないだろうが、一応自己紹介しておこう。我こそが、歌って踊れて、なおかつ試合もこなせる……“モンスターK”川田利明だ!」
観客から万雷の拍手で迎えられ機嫌を良くした川田は早速、全対戦カードを発表する。
「さらにもう一つ! 今日は重大な発表がある」と威勢よく川田が言うと、ビジョンに映し出されたのは『11月25日 ハッスル・マニア2007開催決定!』の文字。
ハッスル最大のイベント『ハッスル・マニア2007』が今年も開催することが決定したのだ。
「ということで、俺も今から何を歌うか迷っているところだ」と、完全に川田は本職を忘れている様子。
しかし、ふと『ハッスル・エイド2007』のことを思い出した川田は一気にトーンダウンしてしまう。
「俺は『ハッスル・エイド 川田利明リサイタル開催!』と発表したはずだ。しかし、ふたを開けてみればどうだ?」
結局は高田総統にすべて美味しいところを持っていかれた川田は不満気。気を取り直した川田は「今日のオープニングは『YAH YAH YAH』を川田利明ソロバージョンでお送りしよう。しかも、本人たちがひがむぐらいの美声を披露しよう」と意気込む。
会場にはチャゲ&飛鳥のヒット曲『YAH YAH YAH』のイントロが流れ始め、ノリノリの川田は観客に手拍子を要求しつつ、いざ歌いだそうとしたところ……。「♪必ず手に入れたいものは〜」と、川田以外の歌声がどこからともなく聞こえてくるではないか。
姿を見せたのは本物のチャゲ&飛鳥! ではなく、チャゲ&飛鳥の物まね芸人コンビ・ノブ&フッキーだ! 歌いながらリングインしたノブ&フッキーは、唖然とした川田などお構いなし。
完全に開き直った川田はヤケクソで一緒にサビの部分を歌い上げ、会場内には三者の見事なまでのハーモニーが響き渡る。
歌い終わると、意気揚々と観客にアピールするノブ&フッキーとは対照的に、がっくりと肩を落として帰る川田であった……。