ファイトカード

高田総統劇場

 「どうした裏切り者? もうおしまいか?」。高田総統以下、モンスター軍の面々がバルコニーに姿を現した。「総統」コールの巻き起こる客席を見渡した高田総統は、「もういいよ!」とコールを制止しつつ、「嬉しいよ」とポロリ。続けて、「月曜日の夜くらい、まっすぐ家に帰れよ! 週の頭からプラプラほっつき歩いてんじゃないよ!」とチクリだ。そして「我こそが高田モンスター軍総統、そしてハッスルの偉大なる支配者、高田だ!」と自己紹介すると、会場は再び「総統」コールに沸き返ったのだった。

 高田総統は続けて、「子供とはいえ、散々大口叩いたくせになんだそのざまは!」とボノちゃんにチクリ。さらにインリン様だ。一人ぼっちでリングに立つボノちゃんを見下ろすと、冷たい笑みを浮かべて「無様な姿ね……。お前なんか、さっさとあの世へ行っておしまい!」と強く言い放った。川田もあとに続く。「おい! 栃木県民が本気で怒ったら、どんだけ怖いか思い知ったか? “田舎っぺ”とか散々、バカにしやがって。今日はお前に、洗練された都会のプロレスってもんを教えてやったんだよ!」と吐き捨てた。
 それを聞いた高田総統が「“都会のプロレス”って……。すでに立ち位置が“田舎っぺ”じゃないか」と細かいツッコミを入れる。川田は「栃木はそんなに田舎じゃないですよ!」と猛烈抗議! さらに「栃木でハッスルを開催しましょうよ〜」と栃木弁のイントネーションでしつこく食い下がる。それを「ま、とにかくご苦労!」とうやむやにしてしまった高田総統は、「ところで」と、リングのボノちゃんに視線を移した。

 高田総統は、「マー君はどうした? あ! まさか金の切れ目が、縁の切れ目ってか? お前のいう友情物語なんてのは、ずいぶん、安っぽいな。んん?」と痛いところを突いた。インリン様も「見るからに育ちが悪そうな子でしたからこうなるのは予想通りでしたわ」と納得してみせる。それを聞いたボノちゃんは、「うるせえ、メスブタ! 友達なんていらねえよ! 1人だってお前らには絶対負けないよ!」と激高し、キッパリと言い放った。またしても罵声を浴びせられたインリン様は、目を丸くして「お前はこの世に存在すること自体が罪よ!!」と言い返した。
 このやりとりを見ていた高田総統は、「落ち着け」と興奮状態のインリン様をなだめ、「たとえ観客にどん引きされようが関係ない。私を裏切ったものには、どんな末路が待っているのか。これでもか〜、これでもか〜と思い知らせてやるわ!」と、ボノちゃんへの徹底的な制裁を宣告し、「バッドラックだ!」と会場をあとにした。高田総統の言うボノちゃんへの制裁とは、一体どれほど残酷なものなのだろうか……。

 ここで会場は暗転。リング上のボノちゃんにのみ、スポットライトが当てられた。ボノちゃんが、観客に向けて話し始める。「ボノちゃんは一人ぼっちじゃない。こうやって、ファンの皆さんが僕を応援してくれるから。苦しいけど、ボノちゃんには帰る場所がない。だから、このハッスルのリングで頑張ります! 大阪のリングで、ボノちゃんに力を分けてください」。とても切ない光景だった。そして、ボノちゃんが最後に、「ドスコイ! ドスコイ!」で締めようとしたところで事件は起きた!
 なんと暗闇の中から突如、姿を現したボブ・サップがボノちゃんを急襲! 不意を突かれたボノちゃんは、サップのラリアットで為すすべもなく倒されてしまった。サップは力なく横たわったボノちゃんを踏みつけながら、「ヘイ、ボノ! オオサカ! ユー アー ダーイ! アイム キル ユー!!」と抹殺宣言。

 すると突然、会場のモニターに大笑いしている高田総統が映し出された。高田総統は、「ハッハッハッハ! おい、裏切り者! まさか、暗闇からサップが来るとは思いもしなかったか? 脇が甘いんだよ! それとだ。私のイベントを、『ドスコイ! ドスコイ!』などというくだらんポーズで台無しされちゃあ、たまらんからな! 大阪はこの程度じゃ済まんぞ。楽しみにしとけよ。下々の諸君よ。これが本当のバッドラックだ!」と、言いたい放題言って大会を締めくくったのだった。
 3日後の3・20『ハッスル29』(グランキューブ大阪)で、ボノちゃんはサップを相手にどこまで太刀打ちできるのだろうか……!?

メインハッスル

6分49秒 モンスターPK

 モンスター軍司令室で、高田総統とインリン様のもとに“モンスターK”川田利明が登場。川田は、「大阪のサップvsボノ戦、俺がボノを潰しちゃって中止になっても、文句言わないでくださいよ!」と高田総統に訴える。高田総統はキョトンとした表情で、「なんだモンスターK、後楽園では歌にばかり力を入れて、ロクに試合もしなかったお前が、やけに気合いが入ってるじゃないか?」とオーバーに驚いてみせた。川田は「当たり前ですよ! 俺はね、あいつに2回も“栃木の田舎っぺ”ってバカにされてるんですよ! 今日はね、全ての栃木県民を代表して、制裁してやるんですよ! 総統、俺が勝ったら栃木でハッスルを開催しましょう!」と、地元・栃木県でのハッスル開催をねだった。

 それを「無理!」と軽くいなした高田総統だったが、「最近のモンスターKは、歌だけでなく試合にも力を入れていることは認める。だから私は、裏切り者のヒットマン第1号として、貴様を指名したのだ」と川田への信頼を明かす。インリン様も、「モンスターK、遠慮は無用よ。あの汚らわしい魔物を、徹底的に叩き潰して再起不能にしておしまい」と川田のやる気を後押しする。インリン様には、母親としての愛情がもう微塵も残っていないのだろうか……。川田は「言われなくても分かってますよ! モンスターKのKは、栃木の名湯・鬼怒川温泉のKですから。鬼怒川とは、鬼のように怒った川田の略ですから! 栃木県民の怒り、しっかり刻み込んでやりますよ!!」と力強く宣言した。

閉じる 今日も、後楽園ホールの正面入口から南側の席を通過して姿を現したボノちゃん。コスチュームは相変わらず同じだが、モンスター軍のロゴには「×」マークが入っている。ゴングが鳴らされると、「ウガ〜!」と叫んで川田に襲いかかったボノちゃん。川田のビンタ、キックにいったんは押されたものの、両手突きで挽回! 一気にコーナーまで押し込むと、重量級の技で川田を痛めつけていく。ボディスラム、ドライビングエルボードロップをぶち込んだボノちゃんは、ケサ固めで川田を絞り上げると、どこで覚えたか肩固めで絞め落としにかかる。これを川田はエルボーを放って脱出。たまらず場外へと逃亡する。しかし、ボノちゃんはエプロンにもたれかかっている川田に間髪入れずにスライディングキックで追撃。さらに場外へ出ると、川田を振って、鉄柵に叩き付けて見せた。ここまでは完全にボノちゃんペースだ。勢いに乗るボノちゃんは、エプロンに上がってきた川田をブレーンバスターの体勢に捕らえる。川田がこれを必死で踏ん張ると、胸板にチョップを叩き込んだボノちゃん。しかし、川田もやられっ放しではいられない。エプロンサイドでキックを放って反撃すると、リングに戻って、ボノちゃんの左足にローキックを連発していく。さらに倒れたボノちゃんの左足にニードロップを投下。続けて、ローキックの連打でいたぶっていった。この攻撃にたまらずヒザを着いたボノちゃん。川田はロープに飛んで勢いを付けてから、フロントキックでボノちゃんを蹴飛ばそうとする。しかし、ボノちゃんは川田の蹴り足を掴んで、ヒザを着いた状態からまさかのドラゴンスクリュー! そして、川田の足を取ると、足4の字固めを仕掛けようとするではないか! これは父親グレート・ムタの必殺フルコースだ。しかし、川田はこれを下からの蹴りで必死に逃れると、ボディプレスも自爆させることに成功。そして、一気呵成のキック攻撃に出る。ボノちゃんをコーナーに追い詰めた川田はジャンピングハイキックでボノちゃんの側頭部を射抜く。これでボノちゃんの動きもストップだ。倒れたボノちゃんの顔面に川田は容赦なくヒザを落とすと、さんざん蹴り倒してから、最後は思いっきりローキックで顔面を蹴飛ばして、3カウントを奪った。

 試合終了後、川田は早々と退場。動けずに横たわっているボノちゃんに向かって高田総統の声が響き渡る。

 「どうした裏切り者? もうおしまいか?」


セミハッスル

9分32秒 69ドライバー

 レイザーラモンに解散の危機が訪れた。2月24日に行われた『ハッスル28』(さいたまスーパーアリーナ コミュニティアリーナ)で、HGとRGはモンスター軍の川田利明と大谷晋二郎に真っ向勝負を挑んだ。日本マット界屈指のハードヒッター川田と大谷。相手が芸人だろうと知ったことかとばかりに2人を滅多打ちに! 特にフンコロガシRGに対しては容赦のないチョップが雨あられと降り注いだ。RGはあまりの痛みに耐えきれず、まさかまさかのギブアップ! RGの胸板はどす黒く変色していた……。
 それから数日後、高田総統が3日後の3・20『ハッスル29』(グランキューブ大阪)で、HG&RGvs川田&大谷の再戦を決定! その後行われた記者会見で、HGはこれを承諾。リベンジに闘志を燃やした。しかし、RGが「もうハードヒットの人たちとはやりたくないんですよ。やりたいなら1人でやってください」と、この対戦カードに真っ向反対! モメにモメた2人からはとうとう“解散宣言”が飛び出してしまった。
 そんな状況を聞きつけた高田総統は、ただの解散では生ぬるいとばかりに、初のコンビ対決を決定! コンビ結成から10年、2人の胸中やいかに……。

 2人に対して行われたインタビューでは……。HGは「まあ、まさかあいつの口から、解散という言葉を聞くとは思いませんでしたけどね。肩の荷が下りた感じですよ。RGは、ハッスルで活躍はしてますけど、戦力ではないですから。これまで溜まったものをリングの上でぶつけます。リングの上なら許されますからね」と完全に怒り心頭。そしてRGは……「あいつ試合中、休んでばっかりでしょ? ズルいんですよ。ハッスルでは力関係が逆転してますから。俺があいつにプロレスの恐さ、奥深さってやつを叩き込んでやりますよ」と今日の試合に自信を見せた。どうなる初のコンビ対決!!

閉じる 両軍がリング上に揃うと、HGが「RG、来いよ!」と挑発。言われたRGは、天龍の背中に隠れてしまう。と、HGが隙を見せた瞬間、RGはドロップキック! HGを吹っ飛ばして得意げだ。この姑息な戦法に怒ったHG。RGの張り手をものともせずに、逆に強烈なビンタで張り飛ばすと、続けてショルダータックルでRGを吹っ飛ばす。ならばとロープワークを見せるRG。HGはこれを避けると、ドロップキックを発射。同時にRGもドロップキックを発射し、相撃ちとなった。意外な場面に観客は拍手喝采だ。続いて、腕の取り合いに移ったHGとRG。これを制したのは意外にもRGだ。HGの腕を取ると、得意げにロープを拝み渡り。しかし! なんと、RGは足を滑らし、エプロンサイドに落下! 呆れ顔のHGはこのチャンスに容赦なく逆水平チョップを、RGの胸板に叩き込んでいった。またも胸板を真っ赤に染めたRGは、たまらず天龍にタッチ。HGも崔にタッチして、今度は天龍と崔のマッチアップとなった。チョップ合戦を繰り広げる天龍と崔だが、崔はエルボーで天龍を痛めつけるとレッグラリアットでダウンに追い込む。続いてHGも天龍にエルボーからニールキックを炸裂させて見せた。しかし、天龍も反撃に出る。コーナーでHGを捕まえると、得意の逆水平チョップを連打。HGの上半身のコスチュームのチャックを外して、素肌に強烈なチョップを叩き込んでいく。このチャンスにいきり立ったのがRG。都合良く天龍にタッチを求めると、すぐにHGに回転エビ固めを仕掛けて見せる。いったんはHGのコブラツイストに捕まりかけたRGだが、天龍のチョップによるアシストを受けて、コブラで切り返しだ。これで勢いに乗ったRGは、天龍とダブルラリアットなど連係攻撃を次々と決めて見せる。そして、自身はコーナーに上ると、天龍が持ち上げたHGを捕まえて、なんとスーパーパワーボム! HGを自分の体重ごとマットに叩き付け、すぐさまジャックナイフ固めで3カウントを迫る。しかし、HGもこれで負けるわけにはいかない。必死にこれをキックアウトしてチャンスを窺うと、崔がコーナーに上ったRGを捕獲することに成功。崔はRGの股間をロープに打ち付けると、続けてアトミックドロップで畳みかけていく。RGも返し技で必死の抵抗を見せるがもはや万事休すだ。最後はHGが、暴れるRGを69ドライバーの体勢でガッチリと捕獲。RGの顔の前で思う存分腰をグラインドさせると、満を持して、RGの脳天をマットに串刺しにして、 相方から3カウントを奪って見せた。

 勝利したHGが、「RG! 冷静に考えてみろ。どんなプランがあるのか知らんが、レイザーラモンを解散して困るのはどう考えてもお前だろ! 今だったら許してやるぞ。あやまれ!」とRGに謝罪を要求。ところが、このHGの大人の対応に対してRGは「誰があやまるか! 俺にはもう新しいパートナーがおるんや!」と天龍を指さした。「今年は天龍さんとM-1出たるからな!」と調子に乗るRGを制止したのは、もちろん当の天龍源一郎だ。マイクで後頭部に激しくつっこみを入れられたRGは、マット上をのたうち回るも、起き上がってHGへの口撃を再び開始! 「もうレギュラーは『ラジカル』だけですね」とHGにグサリ。HGも負けじと「お前こそ、出た番組の視聴率が落ちるって評判だぞ!」とRGに言い返す。お互い一歩も引かないけなし合いだ。

 これを見かねた天龍は、「おい! 偉そうに言うんじゃないよ!」とRGにツッコミを入れると、続けて「HG! RG! 長い間、一緒にやってればな、お互いの嫌なとこがいろいろ見えてくるもんだよ。でもな、そういうもんもひっくるめて付き合ってゆくのがコンビだろうが!」と、HGとRGを諭した。
 これでようやく2人のケンカに収拾がついた形だ。さらに「いつまでも意地を張ってねえで」と、天龍に促された2人は、ガッチリと仲直りの握手を交わした。雨降って地固まる──。高田総統の嫌がらせが、2人の絆を強めたのだった。

 レイザーラモンの解散騒動が片付き、一息ついたところで崔が話を切り出す。「今日は、ハッスル軍になくてはならん人が来てるんですよ!」と呼び込んだのは、腰の手術で2月、3月シリーズを休養した坂田亘だった。いつもの入場曲をバックに堂々と入場した坂田。そして、リングインすると、「ハッスルしてますか!」と客席に向かって咆哮! 観客も大歓声で応える。そして坂田は4月シリーズでのハッスル復帰を明言。さらに、ここ最近すっかりハッスルの主役となってしまったボノちゃんに「俺が戻ってくる以上、そうはいかねえ。主役は俺だ! 俺こそハッスルだよ!!」と主役奪還を宣言した。
 そして天龍が「一発いっとくかあ!」と提案。HGが観客からの声援も手伝って、「お、やりますか! イベントはまだ続きますが、ここらでハッスルポーズいっちゃいましょうか!」と、いざハッスルポーズの準備へ。ハッスル軍一同は、いつもより少し早いハッスルポーズをぶちかましたのだった。


第2ハッスル

7分42秒 ビクトル式300%クラッチ

 ジャイアント・バボ、いよいよモンスター軍追放か!? 昨年の大みそか、デビュー戦の池谷銀牙に敗北してから始まったバボの転落人生。それ以後、汚名を返上すべく必死になればなるほど、本人は空回り。目も当てられない底なしのダメっぷりを披露したのだった。完全に自身を喪失したバボは、トドメに\(^o^)/チエのスリーパーホールドでまさかの失神! 怒ったアン・ジョー司令長官は、試合後リング上でバボを丸刈りに……。
 底の底まで落ちてようやくふんぎりがついたのか、バボは自らアクションを起こした。3日後の3・20『ハッスル29』(グランキューブ大阪 メインホール)でのハッスル再登場が決まった池谷銀牙の記者会見に乱入。不調のきっかけとなった池谷へのリベンジマッチを司令長官に直訴した。司令長官はそんなバボに、「お前の言葉は心に響かねえんだよ! そこまで言うなら根性を見せろ!」と一蹴。後日、バボは司令長官の信頼を取り戻そうと、根性試しの寒中水泳に挑んだのだった。
 その内容がいいか悪いかはさておき、バボなりの意思表示に納得した司令長官は、なんと自らとのシングルマッチという形で、バボにラストチャンスを与えることに! 司令長官の恩恵を受けてのラストチャンス。もうしょっぱい試合は許されない。バボは自分の手で道を切り開くことができるのか!?

閉じる 序盤から気合い満点の攻防を繰り広げる司令長官とバボ。司令長官はヘッドロックでバボを捕まえると、グラウンドに引きずり込む。そして、バボの口を手で塞ぐ拷問技。新弟子いびりでよく見られる光景だ。さらにグラウンドで巧みにバボの首を痛めつけた司令長官は、場外に戦場を移すと、鉄柵に叩き付けてお仕置きだ。続いてイスでバボを殴りつけた司令長官。厳しいゲキを飛ばしながら、バボをいたぶっていく。バボのチョークスラムも外して、またもグラウンドで拷問攻撃を仕掛けた司令長官。手も足も出ないバボに容赦なく蹴りを見舞っていく。場内からは「バ〜ボ!」コールも起こっているが、バボには反撃する余裕すらない。そんなバボに司令長官はバックドロップ、チキンウィングフェースロックと畳みかける。しかし、バボもこれでギブアップするわけにはいかない。力を振り絞って、ロープエスケープするとブレーンバスターで反撃。そして、必殺のバボムの体勢に入る。ところが司令長官はこれをフロントスリーパーで切り返し。バボも強引に引き抜こうとするが、司令長官も離さない。このままバボはマットに沈んでしまうのか? だが、ここでも渾身の力を振り絞って脱出したバボ。司令長官をコーナーに突き飛ばすと、強烈なニーリフトをお見舞いする。そして倒れた司令長官にトドメを刺すべく近付いたバボ。ところが、司令長官は巧みにバボの足を捕らえると、ビクトル投げで転ばして、そのままエビ固め! この丸め込み技をバボは返すことができず。痛恨の3カウントを奪われた。

 立ち上がれないバボに、司令長官が肩で息をしながら声をかけた。「バボちゃん、ダメなレスリングだな」。バボのモンスター人生もここまでかと思われたがなんと司令長官は最後に見せたバボの爆発力を認め……ようとしたが、観客からは「え〜〜〜!」と不満げな声が上がる。司令長官は「お前らにもこいつの進歩が見えただろうが!」と観客を納得させると、「大阪のミーのパートナー。ユーを使うよう、ミーから総統に頼んであげマショウ」と、3日後の3・20『ハッスル29』(グランキューブ大阪)での池谷銀牙戦のパートナーにバボを指名した。司令長官は付け加えて、「これが本当の本当の本当のラストチャンスだから、大阪で池谷銀牙にきっちりリベンジするんデス! 今日のこのレッスンをしっかりとメモリーシナサイ!!」と念押しし、リングをあとにした。バボは、立ち去る司令長官に必死でお辞儀をして、感謝の気持ちを表したのだった。


第1ハッスル

12分00秒 バズソーキック

 モンスター軍司令室では、アン・ジョー司令長官と島田二等兵が、さっそくオープニングの歌合戦について話している。島田二等兵は「司令長官、モンスターKはあんなことしてる場合なんですか? 今日はボノの制裁マッチだっていうのに」と不満タラタラ。司令長官もうなずいて、「まったくデス。トゥデイの制裁マッチ、早くも心配になってきマシタ」とぼやいてみせる。
 と、そこへインリン様が登場。インリン様は不安げな様子など微塵も見せず、「心配には及ばないわ。島田、アン」と2人に切り出した。川田のことを信頼しているのかと思いきや、「私はハナからモンスターKになんか期待してないわ。でもサップ、あなたには期待しているわよ」と隣に現れたボブ・サップに視線を移した。
 サップは、次戦の3・20『KYORAKU presents ハッスル29』(グランキューブ大阪 メインホール)で、ボノちゃんと激突する。サップは、「インリンサマ、モンスターK イズ “KY”。クウキヨメナイ」と日本語混じりの英語で川田をののしった。

 するとここに高田総統も登場。「お前の言うとおりだ、サップ。たしかにモンスターKは空気を読めない」とサップの発言を認めつつ、「とはいっても奴は、自分の使命を忘れるような男ではない。あえて己を追い込み、言い訳のできない状況を作っているのだろう」と川田の心情を察した。しかし高田総統の後ろでは、島田が「そうは思えないけどな」と首をかしげ、司令長官も「ただ、やりたかっただけデショウ」とつぶやいた。川田、仲間からの信頼が薄い男である……。
 ここで、高田総統が話をガラッと変えた。「なにやら、カンフーくんとかいう中国のガキンチョがハッスル軍の仲間になったらしいじゃないか! これを見てみろ!」と、そばのモニターを指さした。そこにはカンフーくんの映像が流れる。

 映像を見終わって、「なるほど……。なかなかすばしっこそうです」と表情を曇らせる司令長官。それもそのはず、カンフーくんことチャン・チュワン君は8歳にして本格的なアクション技術を武器に、約2,000人の応募者の中から映画『カンフーくん』の主役の座を勝ち取った正真正銘のドリームボーイなのだから。共演した女優の泉ピン子さんも「動きの切れが違う」と絶賛しているとのこと。
 そして島田から、第1ハッスルでハッスル軍のセコンドにつくという情報を聞いた高田総統は、鬼蜘蛛たちにカンフーくんを捕獲させるよう司令長官に指令を出し、カンフーくんに対抗するかのように、ウソっぽいカンフーポーズをいくつか繰り出してのビターンを決めたのだった。

閉じる まず先に入場したのはハッスル軍。TAJIRI、KUSHIDA、\(^o^)/チエだ。リングに上がったTAJIRIがマイクをつかみ、「今日は、僕たちハッスル軍の応援に、心強い味方が来てるんです! ご紹介しましょう!」と強力助っ人を招き入れた。
 観客から拍手が巻き起こる中、カンフーくんことチャン・チュワン君が堂々の入場! TAJIRIがチャン君を改めて観客に紹介。「天才カンフー少年、チャン・チュワン君です!」。会場からは大きな拍手が巻き起こる。TAJIRIは「このチャン君、まだ8歳です。僕は世界中を旅していますが、こんな天才少年見たことありません! 本当に凄いんですから!」と客席に向かってアピールし、「チャン君、今日はよろしく頼むよ!」とチャン君にマイクを差し出した。TAJIRIにマイクを向けられたカンフーくんは「タジリ、クシダ、チエチャン。ハッスル、ハッスル!」と、これから試合を迎える3人にゲキを飛ばす。そのかわいらしさに観客も大喜びだ。

 鬼蜘蛛たちがリングに入ったところでゴング。まずは赤鬼とTAJIRIの対戦だ。いきなりグリーンミストで威嚇したTAJIRIは、赤鬼の動きに惑わされることなく、アームホイップで何度も投げ捨てる。続くKUSHIDAも青鬼をアームホイップで投げ飛ばしてから、ドロップキックを炸裂させた。さらにスリーパーホールドで絞め上げるKUSHIDA。たまらずコーナーに逃げようとする青鬼をロメロスペシャルで痛めつけ、腕を捕らえたままチエにタッチした。チエはコーナーからエルボーを落としたものの、青鬼のクロー攻撃の前に劣勢に陥ってしまう。しかし、続いて出てきた黄鬼相手に挽回。フライングヘッドシザーズで黄鬼を場外に落とすと、ハッスル軍は3人揃って、後転からヘッドスプリングで立ち上がり、ハッスルポーズを決めて見せた。しかし、モンスター軍も反撃に出る。チエを捕まえると、TAJIRIとKUSHIDAを場外に追いやり、3匹でトレイン攻撃を敢行。コーナーではカンフーくんが心配そうに見つめている。ここで奮起したチエが、スピアーを赤鬼に炸裂させる。タッチを受けたKUSHIDAもスワンダイブ式のフライングヘッドシザーズ、フィッシャーマンスープレックスで攻め立て、チエを風車式のボディスラムで赤鬼の上に叩き付ける。さらにハッスル軍は誤爆を誘って、青鬼と黄鬼を捕獲。2匹を四つんばいにした状態で腕を極め、身動きが取れないように固めて見せた。ここでチエがカンフーくんをリングに呼び込む。勢いよくリングに入ってきたカンフーくんは、青鬼と黄鬼の背中に乗ってカンフーポーズだ! しかし、ここで赤鬼が背後から近寄りカンフーくんを捕獲。ハッスル軍を蹴散らすと、カンフーくんのお尻をペンペンした。この隙にTAJIRIらを捕まえたモンスター軍。カンフーくんは島田に捕まっしまう。だが、カンフーくんは島田を蹴飛ばして逃れると、すぐさまリングに入って、赤鬼の尻に蹴りをお見舞い! さらにちょこまかと動き回ってモンスター軍を攪乱すると、中村カントクから棒を受け取り、鬼蜘蛛たちをあっという間に蹴散らしてしまった。そして、青鬼と黄鬼の蜘蛛の糸を避けて、誤爆させることにも成功。その隙にTAJIRIが赤鬼をバズソーキックで仕留めたのだった。

 ハッスル軍の3人とともに喜ぶカンフーくん。コーナーポストの上でガッツポーズだ! そんな中、「いや〜、KUSHIDA君よりよっぽど頼りになるねえ〜」とTAJIRIがチャン君を絶賛。続けて、「さすが2,000人に1人の天才カンフー少年だ! 皆さん、ハッスル軍のピンチを救ってくれたチャン君に、いま一度、大きな拍手をお願いします!」と観客に促した。とても小さな強力助っ人に大きな拍手が送られる中、チャン君は「ハッスル シェシェ! エイガカンデ、アイマショウ!!」とちゃっかり映画の宣伝も行ってリングをあとにしたのだった。


オープニング劇場

 スポットライトに照らされてリングに姿を現したのは、“モンスターK”川田利明だ。川田は「『ハッスル・ハウスvol.34』にご来場ありがとうございます! 我こそが歌って踊れる真のハッスラー・川田だ!」と自己紹介すると、続けて当日の対戦カード発表を行った。
 それが終わると川田が話を切り出した。「この1年、俺はハッスルのオープニングを真剣に、大切に作り上げてきた。その神聖な舞台に、土足で踏み込んできた大馬鹿者がいるんだよ。今日はそいつに、俺が……」と、ここでハッスル軍の入場口から崔領二が足早に歩きながら登場。川田のマイクに割り込んだ。「おいおいおい! ちょっと待てや! なに勝手に始めてんねん!」。会場からは、川田と崔の歌勝負を期待する大きな声援と拍手が飛び交った。
 ロープをくぐり抜けて川田に並んだ崔は続けて、「おっさん! なんやねんその格好! ええか? 今日はな、俺がお前をオープニングの舞台から引きずり降したる! 覚悟しいや!!」と、川田を挑発した。しかし川田はそれを無視して、「みんな! 今から、この大馬鹿者とガチンコ勝負する。2人の歌を聴いたあと、どっちがハッスルしてたか、拍手でジャッジしてくれ!」と観客に呼びかけた。

 そしてオープニングファン待望の川田vs崔による歌合戦が開幕! ルールは単純明快、両者が自ら選んだ曲をリング上で歌いきり、双方が歌い終わった時点で、観客からより大きな拍手をもらった者が勝利者となる“観客ジャッジシステム”だ。
 まずは川田に促された崔が先陣を切った。「この日のために週5日、1人でカラオケに行ったんや! 聴いて驚くなよ!!」と、ミュージックをスタート。曲は以前発表した通り、福山雅治の『HELLO』。十八番というだけあって確かに上手い。観客の反応も上々だ。そして崔の歌は無事に終了。
 しかし、満足げな表情を浮かべる崔に川田は、「お前さ、前回、俺が言ったこと、ちっとも分かってないな! 普通のあんちゃんが普通に歌ったところで、お客さんは納得しねえんだよ!」と強くダメ出し! 言い返そうとする崔の言葉をさえぎり、川田は「いいか? エンターテインメントってのはな、個性をどれだけ見せるかってことなんだよ! よく見とけ!」と曲をスタートさせた。イントロが流れ出すと同時に、全身をくねらせ、セクシーなダンスを始める川田! さらにセクシーな衣装を身にまとった2人の女性ダンサーもリングイン。その真ん中に立った川田が歌い始めた曲はなんと……倖田來未の『キューティーハニー』だ! 川田は歌のみならず、ダンスまでも完コピ! 見事としか言いようのない“はじけっぷり”を披露した。これぞまさしくエンターテインメント。観客は大喜びで、川田の熱唱に手拍子で応えたのだった。

 鳴りやまない拍手の中、歌い終わった川田は、ぜいぜいと息を切らしながらも「どうだ? ハッスルのオープニングに関わろうと思ったら、これくらいの覚悟が必要なんだよ!」と、崔を睨み付けた。しかし、川田の芸人魂に圧倒された崔に返す言葉はなかった。
 川田が、観客にジャッジを求める。「一応聞いとくけど、俺の方がハッスルしてたと思う人、拍手!!」。会場からは、拍手どころか大歓声までわき起こる。川田は続けて、「崔の方が……」と観客に呼びかけようとするが、崔が「待て待て待て!」とストップをかける。崔は「聞かんでええ。……俺の負けや!」と敗北を認めた。続けて「おっさんの言うてる意味が、なんとなく分かったわ。もう一回だけ、俺に挑戦させてくれ! お客さん、今日は失礼しました」と、川田にリターンマッチを申し込むと同時に、深々と頭を下げ、観客に自分のふがいなさを詫び、リングをあとにした。

 うつむいて足早に退場していく崔を見届けた川田は、「俺はいつ何時、誰の挑戦でも受けてやる。ハッスルのオープニングは、そういうことだよ! ……ってことでスタートだ!!」と、『ハッスル・ハウスvol.34』の開幕を宣言したのだった。


オープニングムービー

 前回の2月シリーズで高田モンスター軍は、家出したボノちゃんをお仕置きするべく、“インドの狂虎”タイガー・ジェット・シンを刺客に送り込んだ。しかし、このショック療法は裏目に……。大人たちの強引なやり方に反発したボノちゃんは、友達のマー君ことマーク・ハントと結託! 反省して戻ってきてほしいと願うインリン様の気持ちとは裏腹に、ボノちゃんとマー君はタイガー・ジェット・シンを返り討ちにしてしまった。もはやボノちゃんとモンスター軍の関係は修復不可能。互いを憎しみ合うという最悪の結末を迎えた……。

 「今日を持って、お前を高田モンスター軍より完全に追放する。たった今から、お前は裏切り者、我がモンスター軍のお尋ねものだ!」。モンスター軍の鉄の掟を破るものは、何人たりとも許すべからず。高田総統は、3月シリーズで裏切り者を抹殺すべく、2人のヒットマンを用意した。まず、今夜対戦する1人目は、故郷・栃木をバカにされて腹の虫がおさまらない“モンスターK”川田利明! 個人的な恨みも含めて、ボノちゃんに制裁を加えようと真っ先に名乗りを上げた。
 そして3日後の3・20『ハッスル29』(グランキューブ大阪)では、“ビースト”ボブ・サップが2人目の刺客として出撃! 1月シリーズでボノちゃんと仲間割れしたサップ。当時は大人の対応をみせたサップだが、今回の対戦では容赦の気持ちは微塵もなし! ボノちゃんを「“豚ちゃんこ”にして食ってやる!」と息巻いている。

 さらに、ボノちゃんに追い打ちをかけるような情報がハッスルに舞い込んだ。なんとボノのたった1人のお友達だったマー君が、“Kの国”で行われる賞金マッチにエントリーしていることが発覚!! 金に目がくらみ、友情を踏みにじったマー君。すでにボノちゃんとは音信不通となっているという。ひとりぼっちで、地獄の3月シリーズを迎えたボノ。果たしてこの試練を乗り越えることはできるのか!?


前説

 「ハッスル・ハウスにご来場の皆さん、こんばんは!」。恒例となった前説に、ハッスル軍からKUSHIDAと\(^o^)/チエが登場。自己紹介を済ませた2人は、観客にハッスル軍への歓声、モンスター軍へのブーイングといった応援方法を説明し、練習を開始した。するとそんな中、ジャイアント・バボがリング際に登場! バボは派手にロープワークを見せつけると、「いつまでちんたらしゃべっとねん!」と、KUSHIDAとチエにいちゃもんを付け始める。
 「……えーっと。どこの新弟子さんですか?」と、丸坊主になってしまったバボをからかうKUSHIDA。というのも、前回2・24『ハッスル28』(さいたまスーパーアリーナ)でチエに負けてしまったバボは、アン・ジョー司令長官の怒りを買い、罰として試合終了と同時にリング上で髪を刈られてしまったのだ。バボは、「新弟子ちゃうわ! モンスター軍のジャイアント・バボや!」と必死につっこみを入れる。
 そしてチエは、「何それ? 変な頭……」とストレートに表現。バボの頭を凝視して吹き出してしまった。バボは「お前が言うな!」と、髪型がバンザイポーズのチエに的確なつっこみを入れつつ、「ちょっと下がってろ!」と2人をリングのすみに押しのけた。
 バボは、KUSHIDAたちと同様に「総統」コールの説明をして、練習に入る。まばらなコールにバボは、「しょっぱいな! お前ら! 本番はしっかりやれよ!」とゲキを飛ばした。
 KUSHIDAが、「お前、モンスター軍クビになったんじゃないのかよ」とバボに声をかける。バボは「なるかアホ! 今日の俺はな、今までの俺とはちゃうねん。さなぎから蝶に生まれ変わるんや! こんなペーぺーがやる前説も今日で卒業や!」と怒鳴り散らし、リングをあとにした。いつも威勢だけは一丁前のバボだけに、今日の試合もどうなることやら……。
 KUSHIDAは、「相変わらず前説は、上手くならねえなあ」と愚痴をこぼしつつ、「それでは、開演までいましばらくお待ちください!」と前説を締めくくった。