ハッスル大感謝祭2008

ハッスル・リングアナウンサー 幸野善之さんが選ぶベスト・ハッスル

ハッスル・リングアナウンサーとして、そして時にはイベントの盛り上げに一役買う“影の声”として活躍する幸野善之さんが選ぶ“ハッスル・ベストバウト”は、一体どの試合か!? 小さいころから大のプロレスファンである幸野さんの、これまで公に明かされることのなかったプロレス哲学も必見です! それでは、ど〜ぞ!

──さっそくですが、幸野さんの“ハッスル・ベストバウト”を教えてください!
幸野 そうですね、僕の好きな試合は、昨年の『ハッスル・マニア2007』(2007.11.25/横浜アリーナ)の坂田亘vsザ・エスペランサーです。従来のプロレスにあるような激しい技の攻防っていうものはほとんどないんですけど、周りの仕掛けによってハッスルの世界観を出せた良い例だと思いますね。ハッスルの最終回でもいい、と思えるくらいの展開だったんじゃないでしょうか。
──確かに年間ストーリーの集大成である『ハッスル・マニア』にふさわしいものでしたね。
幸野 “虚と実”というか、ああいう試合の流れで、坂田さんの涙の決意表明。すごく響きましたよね。だから、フィクションだということは分かっていながらも、\(^o^)/チエさんも、RGさんもボロボロ泣いてましたし、実況席で解説をされていた眞鍋かをりさんも泣いてましたよね。もちろん、僕も観ていてジーンときましたし。あそこまで、観ている側の感情を浮き立たせるような大仕掛けというか、ファンタジーっていうのは、僕らも日常ではなかなか体験できないわけじゃないですか。
──まあ、ヒマで、モテない、僕みたいな人間には、ファンタジーそのものが縁遠いと言いますか(笑)。
幸野  エスペランサーが初めて登場してから、TAJIRIさんが立ち向かってもまったく歯が立たなくて、小川直也さんが吹っ飛ばされるっていう、あの一連の流れも良かったですよね。。
──客観的に観て、会場にいた人であれば、「もし、レーザービターンを受けたら」っていう恐怖心は、みんな持っていたと思います。
幸野 あのときは、僕たちもレーザービターンを浴びそうになって、太田さんと二人でのけぞりましたからね(笑)。あと、これは試合とは異なるんですけど、安生(洋二)さんが、2004年大みそかの『男祭り2004 -SADAME-』(さいたまスーパーアリーナ)で、いまは亡くなられたハイアン・グレイシーと闘いましたよね。あの試合の煽りVのパロディを、そのあとに行なわれたハッスルでやったじゃないですか。
──それは、『ハッスル・ハウスvol.4』(2005.2.8/後楽園ホール)のオープニングで行なわれたスキットですね。アン・ジョー司令長官が、前年のクリスマス興行において対抗戦で全敗した責任を取って、そのときに同じようなシーンが流されてました(笑)。
幸野 高田総統が話題になっている有名人のモノマネをやったりとか、川田さんが歌ったりとかとは、また違ったベクトルを感じましたね。「ハッスルは、ここまでやるんだ!?」っていう驚きがありましたよ(笑)。先ほどの坂田vsエスペランサーもそうですけど、ああいうのを観てしまうと、年末の12・30『ハッスル・マニア2008』(有明コロシアム)ではどんな仕掛けがあるんだろ、っていう期待感はやはりありますよね。
──『ハッスル・マニア』は、ハッスルにとって年間ストーリーの集大成となるビッグイベントですし、必然的にそうなりますよね。
幸野 以前に読んだ本のなかで、押井守さん(日本アニメ界を代表する映画監督)が言ってたんですけど、“全部が全部分かってしまうと、作品が退屈になってしまう”と。かと言って、どの位のさじ加減にするかっていうのは、観客ひとりひとりの嗜好が異なるので、おおまかにしか言えないんですけど、分からない部分を2割なり、ちょっと残しておくと、「何かがある」とか、「これは深いものである」っていう感じで、観る側が考えてくれるみたいなんですね。
──あえて隙間を作っておくと。
幸野 ただし、隙間だらけだと、観る側も「なんだよ……」となって離れちゃいますけどね(笑)。ちょっとなんですよ。そのちょっとした隙間を、観る側が補完してくれると。そういうのもあったほうが、面白く観られるんじゃないですかね。少なくとも、僕はそういうエンターテインメントが好きです。逆に1から10まで教えてくれるエンターテインメントであるならば、もっと技術的にも研ぎ澄まされたものであったり、練りに練ったもの、何度観ても楽しめるものでなければいけないと思うんですよね。
──全部を与えてしまうと、完璧なものを求められるわけですから、それもまた大変なことですよね。
幸野 そうなんですよ。だから、観る側が積極的に興味を持って、なおかつ創造できる空間をハッスルなら提供できると思うんですよね。ほかの団体では、やろうと思っても、まず選手全体に目指す世界観を伝えないといけないですし、これは難しい作業ですからね。
──なるほど。これは、今後、ハッスルを創る上でも重要なポイントですね。あと、これは太田さんにも聞いている質問なんですが、リングアナウンサーとして思い入れのある試合は?
幸野 リングアナとしてなら、ハッスル仮面のコールは気持ち良かったですね(笑)。
──確かに、あれは納得です(笑)。
幸野 最近だと、『ハッスル・ツアー2008〜11.22 in IBARAKI〜』(2008.11.22/水戸市民体育館)のハッスル黄門やナットーマンの前口上なんかも、気持ち良かったですね。あと思い出に残っているという点では、去年、大阪でRGさんとボノちゃんがシングルマッチをやった大会ですね。

──ええっと、それはマニアの前だから『ハッスル26』(2007.9.22/大阪府立体育会館)ですね。
幸野 そのときに、大阪に向かう新幹線で、僕がめまいを起こしてしまって、人生で初めてストレッチャーに乗せられて病院に搬送されたんですよ。もうホントに具合が悪くなってしまって。それで、その当時は、お客さんをリングに上げてハッスルポーズをさせたりとか、応援ボードを試合前に行なっていたりしたので、僕がいないとまずいよっていう話になってたんですね。
──本人はそれどころじゃない状態にも関わらず(笑)。
幸野 そうなんですよ(笑)。それで、めまいで頭がグルグル回ってる状態で、結局は会場に戻ってオープニングだけはやったんですよ。それで、今回このインタビューでベストバウトの話が出たので、このときのVTRを見返したんですけど、もうひどいもんでしたね。
──ひどいもんでしたか(笑)。
幸野 だって、観客に向かって「いま、点滴を打ってここまで来たんだよー!」って言ってましたからね。
──まずは報告から(笑)。
幸野 観客にしてみれば、いきなりそんなことを言われても、まったく分からないことですからね(笑)。あと、そのときはたまたま応援ボードも少なくて、「なんだ、なんだ、少ないな〜。泣いちゃうよ〜!」って言ってたりとか。まあ、いまとなっては悲しい思い出ですよね。
──すみません、まさかこのインタビューがきっかけで、そんな悲しい過去を思い出させていたとは(笑)。では、最後にハッスルファンのみなさまに向けてメッセージをお願いします!
幸野 そうですね、後楽園大会の休憩明けに行なわれている『応援ボードコンテスト』に、ぜひ参加してもらいたいですね。
──先日の『ハッスル・ツアー2008〜11.20 in KORAKUEN〜』(2008.11.20/後楽園ホール)では、なぜか裏方であるはずのハッスルスタッフに向けての応援ボードなんてのもありましたけど(笑)。
幸野 でも、そういうのでもいいんですよ。まあ、あまりにもわけが分からないものは、こちらもコメントに困りますけど(笑)。ただ、せっかくテレビに映るわけですから、テレビで見てるお友達に向けたものでも、僕はいいと思うんですよね。
──ビデオレターがわりに使ってしまうと(笑)。とにもかくにも、幸野さんをビビッて、たじろがせるぐらいの応援ボードを、ファンの方にはぜひ作ってもらいたいですね。
幸野 僕もアドリブが利かないなりに、コメントは必ずしますんで(笑)。テレビにも映りますし、ハッスルのパンフレットにも載りますから、一緒になって楽しんでくれればと思います!