ハッスル大感謝祭2008

野口大輔レフェリーが選ぶベスト・ハッスル

ハッスル・メインレフェリーとして、野口大輔レフェリーが選ぶ“ハッスル・ベストバウト”は、一体どの試合か!? 2004年のハッスル旗揚げからの5年間、これまで幾多の名勝負を見届けてきた野口レフェリーが語る“至近距離の真実”とは、はたして……!? それでは、ど〜ぞ!

──さっそくですが、野口レフェリーの“ハッスル・ベストバウト”を教えてください。
野口 ベストバウトですよね……2試合あるんですけど、どっちかに絞らなきゃダメですか?
──企画のことを考えたら、ダメと言いたいところですが……まあ、いいでしょう(笑)。それでは、ひとつめは?
野口 ひとつめは、記念すべきハッスル両国初進出のオープニングマッチとして行なわれた島田二等兵vs中村カントクです。
──その試合は、『ハッスル8』(2005.3.18/両国国技館)ですね。
野口 10月の『ハッスルGP2008』決勝戦で、川田さんのお父さんが倒れたときに、映像を使って救急車内の模様をライヴで伝えてましたよね? 島田vsカントクは、この手法の先駆けですね。だって、会場の外に出て行って、両国駅前や、ちゃんこ屋で闘ってるんですよ(笑)。
──どこでフォールをしてもいいし、誰がレフェリーをやってもいいという特別ルール(エニィウェアフォール・エブリバディレフェリーマッチ)だったんで、二人が外に出てからは、随時中継が入ってたんですよね。しかも、その間に次の試合がどんどん行なわれていって(笑)。
野口 だって、決着がついたのは、第4試合終了後ですよ。突然、二人が外から戻って来て客席で乱闘してたら、なぜか用意されていた特設すべり台ですべってるんですもん。 ──あのすべり台も、かなりシュールでしたよね。
野口 しかも、最後に3カウントを入れたのは青木裕子ですよ(笑)。ハッスルがハチャメチャにやってた頃の集大成が、たぶんあの日の両国大会だったんじゃないですか。そのなかで最もバカバカしかったのが、島田とカントクの抗争だったと思うんですよ。両国国技館って、会場の都合上、特効とかそういうのが使えない会場じゃないですか。そのなかで、ああいう映像を使ったりとか、すべり台を使ったりとか、そういう実験ができたっていうのがすごく印象に残ってますね。
──試合の勝敗を決めるのに、観客ジャッジシステムが導入されたりしましたよね。
野口 いろんなネタが、いっぱい詰まってたんですよ。ハッスル仮面に仲間が増えて、ピンクやイエローが加わったりとか、あとは坂田亘が、公認凶器としておでんの屋台を引っ張ってきたりとか(笑)。
──アツアツおでんが、凶器だったんですよね(笑)。
野口 そんななかで、島田とカントクの抗争は、初期ハッスルに無くてはならない部分だったじゃないですか。いまは、島田を燃えさせる相手がなかなかいませんよね。
──確かに、いまは二等兵から特命係長に昇進されてますけど、ライバルと言える存在は、いまのハッスルには見当たりませんね。
野口 やっぱりカントクみたいな……でもまあ、カントクが一番のライバルなんですよ。そう言えば、DSEがあった事務所の向かいにあるカフェで、カントクが女性と密会していて、出てきたところを島田が襲撃したりとかしてたなあ(笑)。
──そんなこともありましたね(笑)。
野口 ああいう抗争も含めて、やっぱりあの両国での対決っていうのは、ベストバウトと呼ぶにふさわしい闘いだったと思いますね。
──なるほど。では、もうひとつのベストバストは?
野口 もうひとつは、青森でやったタイガー・ジェット・シンvsKUSHIDAです。

──その試合は、『ハッスル23』(2007.6.10/青森県営スケート場)ですね。
野口 いまだから話せるんですけど、あのときレフェリーをやりながら「KUSHIDA、死ぬんじゃねえか?」って本気で思いましたよ。でも、KUSHIDAが血ダルマになりながら、シンに立ち向かって行くじゃないですか。だから、なかなか止められないんですよね。
──確かに、尋常じゃない出血量でしたよね。
野口 だって、試合後にKUSHIDAを担架で運んだんですけど、頭のところに血だまりができてましたからね。下にTシャツを敷いてたんですけど、Tシャツがあっという間に真っ赤になって、絞ったらビチャビチャって垂れてくらいでしたもん。あんな血だまりを観たのは、生まれて初めてですよ。
──そもそも、ハッスルでああいう大流血戦っていうのは珍しいですよね。
野口 確かに、ハッスルっぽい試合ではないんですけど、だからこそ、ああいう試合があると輝くんですよ。しかも、後楽園ホールじゃなくて、地方の青森であったっていう。たぶん、KUSHIDAのいままでの試合で、一番インパクトがあったんじゃないですか(笑)。
──ただ、地上波では、当然のことながらオンエアされませんでしたよね(笑)。
野口 これはもう貴重な“お宝映像”ですよ(笑)。でも、あの試合は、改めてシンの恐ろしさが伝わった試合だったし、その恐ろしいシンに対して、必死に食らいついていったKUSHIDAも、よくやったと思いますよ。まあ、僕のベストバウトは、この2試合ですね。
──さすが、ハッスルで行なわれた幾多の名勝負を至近距離で裁いてきた野口レフェリーだけあって、ファンのツボを突く見事なセレクトですね。あと、今回の『ハッスル・アワード2008』では、2008年で最も活躍したハッスラーに贈られる“ベスト・ハッスラー”を決めるファン投票を行なってるんですが、野口レフェリーが選ぶ“ベスト・ハッスラー”は誰でしょう?
野口 普通なら、やはり川田さんなんでしょうけど、それだと面白くないですよね?
──いや、特に面白さとかは求めていないので(笑)。
野口 じゃあ、川田さんで……いや、やっぱり川田ファミリーです!
──ファミリーでの登場は、まだ2回ですよ(笑)。
野口 でも、やっぱりインパクトが一番強烈じゃないですか。野球で例えると、ペナントレースの流れを決定づけた一発みたいな。
──確かに、川田ファミリーの登場は、ハッスルの年間ストーリーの流れを決めた一発ではありますよね。
野口 いや〜もう、あれは逆転サヨナラホームランですよ。
──なるほど。では、もうひとつ、最優秀新人賞っていうのもあるんですが?
野口 う〜ん、ニセHGも良かったんですけど、やっぱり僕は人狼ですね。試合はもちろんなんですけど、入場が好きなんですよね。
──すみません、残念ながら、人狼は今回ノミネートされてないんですよ(笑)。
野口 えっ!? そうなんですか? それはショックだなあ(笑)。でも、やっぱり今年は人狼ですよ。
──でも、人狼って、初登場から3年経ってますけど……。
野口 それは野球で言うと、1軍経験がほとんどないプロ2、3年目の選手が、急に大ブレイクして新人王を獲得するみたいなもんですよ(笑)。
──また、野球ですか(笑)。でも、そう言われてみると、確かに人狼はギリギリ候補に入るような……。
野口 プロ2年目で新人王を獲得した、我が横浜ベイスターズの金城龍彦と一緒ですよ。
── 人狼は、“ハッスルの金城”だと(笑)。
野口 そうですよ。2軍でずっとくすぶってたんだけど、1軍に上げてみたら「おっ、なかなかこいついいじゃん」みたいな感じで、そのまま才能が開花したタイプですよ。
──でも、それって、ザ・モンスター℃も近いものがありますよね?
野口 ℃の場合は、毎年だいたい2割5分ぐらいは打つんだけど、急に開眼した内川聖一(横浜ベイスターズ)みたいな感じですね。
──今度は、ベイスターズですか(笑)。
野口 いままで、なかなか陽が当たらなかったんだけど、プロ8年目で大ブレイクして、いきなり首位打者みたいな(笑)。
──でも、野球に例えると、違いがよく分かりますね(笑)。
野口 今年の℃は、4割近く打ちましたよ。間違いなくハッスルの首位打者ですね。
──でも、こうやって振り返ってみると、今年は、いままでなかなか陽が当たらなかったモンスターたちが、復活して見事にブレイクした年でもあるんですよね。
野口 そうなんですよ。それで、ハッスルには、まだまだ隠れた強いモンスターっていうのが、いっぱいいるはずなんですよ。ひつま武士とか、鬼妖拳とか。
──ブレイク予備軍が(笑)。
野口 来年は、そういう発掘もぜひやってもらいたいですね。“ハッスルの金城”、“ハッスルの内川”が、続々出てくるはずですよ!