ファイトカード

高田総統劇場

試合後、マイクを握った小川は「オイオイオイ、何が公開処刑だよ。勝っちゃたよ。高田、大口叩いて隠れているんじゃねえ! ビビってねえで出て来い!」と高田総統を呼び出す。すると場内のスクリーンに高田総統の姿が。

 「チキン&ポーク、今日のところはおめでとう。1度や2度勝ったくらいでいい気になってもらっては困る。私の後ろには世界中のモンスターが控えている。もちろん日本にもだ。私の知り合いの高田PRIDE統括本部長の遺伝子を受け継いだ大物がいる。『ハッスル4』までビビってたじろいでいるがいい。NO FEAR」

 実際に会場には姿を見せなかったものの、高田総統は意味深な言葉を残した。高田PRIDE統括本部長の遺伝子を引き継ぐ人間で『NO FEAR』と言えば、あの超大物日本人レスラーしかいないのだが…。

 そんなことはお構いなしに小川は「何がNO FEARだ! 訳分かんねぇこと言ってんじゃなえよ!ビビってたじろぐわけねえだろI」と一蹴した。

 そしてハッスルが始まって以来、初めて勝利の後のハッスルポーズに、特別ゲストが参加! 何とあのゴルフ界の賞金王・片山晋吾さんがリングの上に。暴走王、破壊王、そして賞金王が横並びになって、歓喜の「3、2、1 ハッスル!ハッスル!!」を決めたのであった。

第9試合

7分37秒 俺ごと刈れ→片エビ固め

閉じる まずは橋本とホール。ホールは橋本のお腹を指差し笑って挑発する。さらに四股を踏むしぐさを見せて、「お前は相撲取りか」とでも言いたげな表情である。しかし橋本は拍手で応戦。それくらいのことでは動じない。そしてホールが咥えていた楊枝を投げつけてから、本当の闘いが始まった。

 怪我をしている右腕ではなく左腕を攻めるホール。グラウンドになると橋本を頭をなでるように平手打ちにしてここでも挑発を続ける。ブレイク後、橋本はヘッドロックでホールの頭を絞め上げるが、ホールはそのまま橋本をロープに振ってショルダーアタック。右手を掴んでラリアットを連発する。しかし橋本は「バカヤロー!」と叫びながら強烈な袈裟斬りチョップ、さらに今までのお返しとばかりにホールを踏みつける。ここでホールが島田レフェリーに何かアピール。島田レフェリーがそれに気を取られている隙に、橋本にサミングをお見舞いする。

 この行為を見ていた小川が遂にリングイン。怒りの拳を握りしめ、こちらもタッチを受けたナッシュに殴りかかろうとするが、島田レフェリーが小川に「ノーフェイス」と注意を与える。これでペースを乱した小川は手四つからナッシュの膝蹴りをくらってコーナーまで押し込まれると、ナッシュがエルボーの乱れ打ち。高角度のボディスラムでフォールに入る。

 ここで恐れていたことが起きてしまった。同じモンスター軍のナッシュのフォールに島田レフェリーは高速カウント! 普段ならカウントワンの間に一気にスリーまでカウントを入れる。これを慌てて返した小川はその怒りを対戦相手にぶつける。腰投げと巴投げでアウトサイダーズを次々と迎撃。橋本にタッチする。

 小川の勢いをそのままに橋本はナッシュに袈裟斬りチョップを連発。しかしアウトサイダーズも反則だけでここまで来たわけではない。ナッシュが橋本をロープに振ると、ホールが後ろからラリアットでアシスト。ナッシュがフロントキック、そしてサイドバスターから次々と橋本をフォールに行く。ここでも高速カウントの島田レフェリー。橋本は懸命にそれを返していく。

 このピンチを乗り切った橋本は重爆キックからDDT。充分に余力を残していた小川にタッチする。一本背負い、巴投げと柔道殺法でアウトサイダーズを投げ捨てる。そしてナッシュに必殺のSTO! しかし2人がかりで攻めてくるアウトサイダーズを今一歩攻めきれない。逆に合体攻撃を受けてピンチを迎えてしまう。カットに入ろうとする橋本を島田レフェリーが何度も静止。明らかにモンスター軍よりのジャッジに会場からはブーイングが起こる。

 これまでレフェリーの指示を素直に聞き入れてきた橋本が盟友・小川がやられている姿を指を咥えて見ているわけにはいかない。島田レフェリーを投げ飛ばし、小川を救出に入る。重爆ミドルをアウトサイダーズに叩き込む橋本はなんとダブル袈裟斬りチョップを披露! OH砲に最大のチャンスが訪れる。まずはナッシュに『刈龍怒』を食らわせ、葬り去ると、続いてホールには渾身の力を込めた『俺ごと刈れ』。そのまま小川がフォールの体勢に入る。

 するとここで起き上がった島田レフェリーがアウトサイダーズとOH砲を間違えて、まさかの逆高速カウント。これにより初めてOH砲がハッスルで勝利を手にした。


第8試合 三冠ヘビー級選手権

12分56秒 キック→片エビ固め

 「引きこもりの象徴、あの古臭いベルトを私の骨董コレクションに加えてやろう。ハッハッハッ!」

 試合前から勝ち誇る高田総統。その横では、島田が例の憎たらしい笑みを浮かべて「川田が大嫌いなハードコアスタイルですよ」と、高田総統に媚を売る。そのあまりの媚びっぷりは、高田総統が「はしゃぐな、島田!」と制するほどの見苦しいものだった。

 伝統の、いや王道の3冠ベルトが本当にハードコアスタイルにさらされ、高田総統の骨董コレクションに加えられてしまうのか? イデオロギー、そして名誉を賭けた闘いが始まろうとしていた。

 両者は91年のチャンピオン・カーニバルで1度対戦しており、その時はまだカクタス・ジャックという名だったミックを川田が一蹴している。しかし、WWF(現WWE)でハードコアの帝王となった現在のミックは、明らかにカクタス・ジャック時代のミックとは別人だ。 ミックはやはり、禁断の有刺鉄線バットを持っての登場。川田が「絶対に許さない」と言っていた、王道プロレスを汚す凶器。リングにこそ持ち込まなかったが、川田の気持ちを揺さぶるのには充分な効果があっただろう。

閉じる 試合は打撃戦となった。先手をとったのは川田。右ローキックから左のミドルを2発、エルボーを加えて最後はコーナーへ詰めてのハイキックだ。ミックがパンチで反撃しようとするが、川田のエルボー、パンチにたじたじ。ショルダースルーで場外へ投げられ、花道へ顔面を叩きつけられ、ハイキックでフェンス外へ蹴り飛ばされる。川田の攻撃にミックは全く反撃できなかった。

 すると、ここでミックは正攻法ではかなわないと悟ったのか、禁断の有刺鉄線バットをついに手にした! さらにリングへイスを投げ入れる暴挙。まさに王道マットを汚す行為の連続。そして、ミックは川田のセコンドをバットで滅多打ちにすると、そのままリングインしようとする! この土足でマットを踏みにじるような行為を、王道の番人・和田京平レフェリーが見過ごすはずがない。体を張って、ミックからバットを奪い取った。

 闘いは再びリング上へ。川田は怒りのストンピングをミックに見舞うと、エルボーでやはり圧倒。ミックは反則パンチからのパイルドライバーを皮切りに、川田を場外へ投げ捨ててネックブリーカー。倒れた川田にエプロンからのエルボードロップと猛反撃を見せる。

 ミックは顔面パンチから、スリーパーホールド。これはロープエスケープで逃れた川田だったが、続くDDTでカウント2を奪われる。ここで何と、業を煮やした島田参謀長がミックに有刺鉄線バットを手渡した!

 みるみる内に顔色が変わる川田。許せん! 振りかざされるバットにキックを合わせて防ぎ、それでも殴りかかろうとするミックの顔面へ蹴り、そして延髄斬り! もんどりうって倒れるミックからバットを奪うと、それを使うことなくリング下の島田参謀長へ投げつける!

 だが、その隙をついたミックはラリアット。これはカウント2。するとミックは必殺(?)の臭い靴下攻撃“ソッコ”に出るべく、靴下を右手にはめた! またしても王道プロレスを汚す行為だ。川田は怒りの顔面蹴りを連発し、ロープへ飛んでのラリアット。ミックの靴下を無視するように攻め立てる。ダウンしたミックへストレッチプラムを決め、フォールに入るがカウントは2。続くダブルニードロップもカウント2。さすがにミックはしぶとい。ならばとロープへ飛ぶ川田だが、リング下の島田参謀長に足を引っ張られ転倒。

 そして嗚呼、ついにミックのソッコが川田の口に押し付けられてしまった。マンディブル・クローだ。まさに屈辱! 伝統の3冠戦で、ミックのハードコア戦法を2度も許してしまった。川田は投げで逃れると、怒りのパンチ&エルボーを叩きつけ、延髄斬り! しかし、カウントは2!

 ならばと川田は、立ち上がろうとするミックの顔面へ渾身のキック! バッタリと倒れるミックへフォールに入る。ワン、ツー、スリー! 見事な速攻だった。最後まで正攻法を貫き、ミックのハードコア戦法&島田のダーティーな横槍を粉砕して見せた。

 3冠のベルトを、高々と突き上げる川田。帰りの花道では、その場で足踏みの“川田流ハッスルポーズ”(?)を見せ、無表情ながらも全身で喜びを表現した。12,057人、前回ハッスル3よりも2000人多い観客を前に、王道プロレスの真髄を発揮した川田であった。高田総統の野望が、まずひとつ、打ち砕かれた。


第7試合 ダイナマイト・ハードコア・ハッスル・ウェポン・マッチ

 先に1人だけリングインした金村はいつものテーマでおなじみのパフォーマンス。今回は組み体操のおまけ付きで会場を沸かせる。今回のダイナマイト・ハードコア・ハッスル・ウェポン・マッチとは、ある一定の時間が過ぎると次々と新たな武器が登場するというシステム。その武器をどう使うかが、勝敗の鍵を握る。

閉じる 対戦相手の田中&黒田&本間組がリングに入ると、ゴングが鳴る前に襲い掛かる金村&グラジエーター&サブゥー。すぐに場外に落として、いきなり場外乱闘で試合の幕が開いた。金村を捉えた黒田は実況席の目の前に歩いていくと、机に金村を叩きつける。

 リングの下から机を出したグラジエーター。黒田を机の上に寝かせると、サブゥーがフライングボディプレスを敢行する。しかしその横では本間が金村をコーナー最上段から場外の机へ向けてフランケンシュタイナー。6人が入り乱れる激しい展開に、リング上はどこを見ていいのか分からないような状態になる。

 場外の机をリング内に投げ込む黒田。金村をその机にバスター、この試合初めてフォールを狙うが、これはサブゥーにカットされる。しかし田中と本間が机の残骸を持ってすぐに攻撃。田中がコーナーに備え付けた机に金村を叩きつける。

 そしてここで初めてハッスルウェポン、白いギターが登場。先にこの武器を手にしたグラジエーターだが、すぐに黒田が奪い返して、グラジエーターの頭に1発 白い粉がリング上に舞う。ここで田中が金村にラリアットからフォール。さらに黒田が哲っちゃんカッター、ラリアットの連続攻撃。田中がスーパーフライを決めて、万事休すとなるが、サブゥーが間一髪のところでカットに入る。

 そして2つめのハッスルウェポンは何と自転車。ギターに引き続き、この武器を手にしたのは黒田だ。金村を轢いて、しっかりこの武器を有効活用する。そのまま花道を自転車で突き進む黒田にグラジエーターがダイビングラリアット! リング上ではサブゥーが本間をキャメルクラッチで絞め上げ、グラジエーターも花道で田中にキャメルクラッチをかける。花道での自転車攻撃から復活した金村がここでリングに戻り、本間にトップロープから滞空時間の長いセントーンを敢行。しかし黒田がカットに入り、チャンスを逃す。

 ここまでやられっ放しだった本間は第3のハッスルウェポン、ゴミ箱を手にして、サブゥーを殴りつける。さらに田中が金村とサブゥーの頭にゴミ箱をかぶせて、本間がトップロープからドロップキックという離れ技を見せると、今度は金村を逆さ釣りにして、ゴミ箱に頭を突っ込ませ、イスを置いてのスライディングキック。ここにきて田中&黒田&本間組が武器を有効に使い始め、試合の流れを掴み始める。

 そして最後のハッスルウェポンが登場。白い煙の中から現れたのはなんとジャイアント・シルバだ! 真っ先に近づいていった本間は、少し驚いた表情を見せながらも、「行け」とシルバに攻撃を促す。しかしシルバはそれを無視。本間、黒田、田中を次々となぎ倒し、リングに上がる。わけが分からないうちにシルバを見方につけた金村組は、グラジエーターが花道からリングに向かって本間をアッサムボム。さらにシルバが本間にチョークスラムを決めて、完全に形勢が逆転する。場外の田中にサブゥーがフライングボディプレス、そして完全にグロッギー状態の本間に対して、グラジエーターが机へのアッサムボムで3カウントを奪った。


第6試合

10分2秒 袈裟固め

 島田レフェリーのモンスター軍勧誘をツームストン・パイルドライバーで断り、大谷のパートナーに志願した坂田。これがヘビー級転向第1戦となる。大谷も元はジュニアヘビー級であるだけに、スーパーヘビー級のコールマン&ボビッシュのパワーに対抗することが出来るかどうかが注目された。

閉じる 高田総統に激励され、ドゥ・ザ・ハッスルのモンスターバージョンポーズを決めたスーパーパワーズ。先制したボビッシュが坂田に襲い掛かろうとするが、逆にジュニアコンビのダブルドロップキックを浴びせられた。そのままコンビネーションで攻めようとしたジュニアコンビだが、ボビッシュのダブルラリアットに吹っ飛ばされる。ボビッシュは大谷をボディスラム、坂田をリフトアップスラムで投げ捨て、パワー差をアピール。

 コールマンもフロント・スープレックス3連発で、軽々と坂田を投げ捨てる。さらに、ボビッシュのボディプレスに青息吐息となってしまう坂田。パワー差、体格差はいかんともしがたい。そこで坂田も考えた。ボビッシュにまたも高々とリフトアップされると、その顔面を手でこする摩擦戦法。タッチされた大谷はボビッシュをコーナーでダウンさせると、「ハッスル、ハッスル」の掛け声と共に顔面ウォッシュを敢行する。カットに入ろうとしたコールマンを捕まえた坂田も、顔面ウォッシュでコールマンの顔面を踏みにじる。

 さあ、ジュニアコンビの大反撃が始まった。大谷はボビッシュのラリアットをかわすと、そのままローリングソバット。コールマンにはバックドロップをお見舞いする。タッチされた坂田はボディスラムから、トップロープでハッスルポーズを決めてからのフットスタンプ。これはカウント2に終わったが、坂田はコールマンの右腕をとって腕十字、次は左腕をとってこちらにも腕十字を決める。

 しかし、坂田の猛攻もここまで。ボビッシュがカットに入ったことで流れが変わった。同じくカットに入った大谷をボビッシュが抑えている間に、コールマンが必殺のタックルから坂田をパワースラム、そしてマウントパンチから袈裟固めを決める! 為す術なくタップする坂田。

 やはり最後はパワー差がものを言った。坂田のヘビー級転向第1戦は、苦い黒星スタートとなってしまった。


第5試合

2分35秒 リキラリアット→片エビ固め

 ZERO-ONE大阪大会、モンスター軍の乱入による橋本のピンチを救ったのは長州だった。これにより急遽、高田総統が長州の制裁マッチを勝手にマッチメーク。しかも「長州力という名前、存在をプロレス界から消してやる。長州を思う存分茶化してやれ」と、長州のストロングスタイルとは正反対に位置するアダモンスターを対戦相手に指名したのだ。

 花道を歩くアダモンスターはワームの動きや「ハイ!」を連発。長州戦を前にしても、全く変わらない。対する長州はTシャツすら身に着けず、すでに臨戦態勢に入っている。試合前のスクリーンで流された「何がしたいんじゃ! コラッー!」という台詞がその姿からビンビン伝わってくる。

閉じる 島田参謀長をセコンドに従えたアダモンスターはゴングが鳴った後も「ハイ!」を繰り返す。それを長州は威圧感たっぷりに睨みつける。先に仕掛けたのはアダモンスター。頭突きとエルボーで長州をコーナーに詰める。しかし長州がこれに黙っているわけがない。髪の毛を掴むと、強引に体を入れ替えてストンピングを連発する。そしてフライングメイヤーで投げると脳天にエルボー、そして反則すれすれのチョークスリーパーでアダモンスターを絞め上げていく。たまらず場外に逃げたアダモンスターは何と客席に腰掛けて、一般人に助けを求めるパフォーマンス。さらに会場を練り歩き「ハイ!」。

 ようやくエプロンサイドに戻ってきたアダモンスターを鉄柱に叩きつける長州。パワーでは決して負けていないアダモンスターもヘッドバットとグーパンチで長州を後退させる。コーナーに飛ばしてボディプレス。モンゴリアンチョップで遂に長州の膝が崩れてしまう。

 しかしここで終わらないのが長州だ。「くそったれが!」と叫びながら強烈な前蹴りをアダモンスターに食らわせるとリキラリアットを一閃! わずか一発でアダモンスターをマットに沈めた。勝ち名乗りを受ける間もなくリングを降りる長州。ゼブラーマン戦に引き続き『ハッスル』のリングでど真ん中のストロングスタイルを貫いた。 


第4試合

5分43秒 コブラクロー→体固め

 試合前、ZERO-ONE事務所を訪れたゼブラーマン。橋本に「調子はどうですか?」と尋ねられると、「プロレス技を決められなくて、勝てないです。押忍」とどうにも弱気。どうやら連敗が効いているようだ。それを励ますかのように、橋本が言う。「プロレスは技も大事だけど、一番大事なのは心ですよ! 俺と初めて出合った時の、ピリピリした心を取り戻してください。野性ですよ!」

 「野生か…」ポツリとつぶやくゼブラーマン。野性を取り戻すべく、向かった先は心のふるさと動物園であった。動物園を満喫するセブラーマンが、ふと立ち止まった檻はやはりシマウマの檻。しばし見詰め合い、元気を取り戻したセブラーマンは、さらに白黒仲間のパンダにも元気をもらう。

 だが…ゼブラーマンがどうしても近寄れない場所があった。そこは、虎の森。虎の作り物にさえビビるゼブラーマン。やはり元がシマウマだけに、捕食動物である虎は苦手なのか。「同じ縞模様じゃないですか?」とスタッフに聞かれると、「黄色と黒は危険なんだよ!」と叫ぶ。確かに、踏み切りの色は黄色と黒。危険の印だ。どうにもゼブラーマンは、本能で虎が苦手らしい。それでも、最後は元気に「今度こそ白黒つけるぜぇ!」とポーズを決めて見せた。場内に往年のヒーローソングを歌ってきた、水木一郎が高らかに歌うゼブラーマンのテーマソングが鳴り響く。野生を取り戻したゼブラーマンは、ハイキックなどを繰り出しアピールしながらの元気な登場だ。

 しかし、続いて入場ゲートのモニターに映し出されたのは、あの黄色と黒の縞模様! 不気味な「サーベルタイガー」のテーマ曲が鳴り響き、不穏な空気が漂う。対戦相手“悪の中の悪”とは、まさか…そう、タイガー・ジェット・シンだったのだ!

 サブゥーを引き連れ、いつものようにサーベルを加えて現れたシン。いきなり客席へとなだれ込んでいく。横浜アリーナは恐怖の戦慄に包まれた! それはゼブラーマンも同様。リング上でシンとサブゥーに挟まれ、だじろぐゼブラーマン。よりによって、苦手な虎が相手とは…。

閉じる シンはその隙をついて、ターバンをゼブラーマンの首に巻きつけて絞めつける。さらにマスク剥ぎの暴挙だ。正体が小笠原だと分かっていても、素顔をさらすのはマスクマンにとって最大の屈辱。何とかマスクを剥がされるのは阻止するも、シンは続いて噛みつき、イス攻撃と悪行の限りを尽くす。 やっとゼブラーマンが正拳突きと左右ハイキックで逆襲するも、これがシンの怒りに火をつけてしまった。リング上にイスを持ち込んでの一撃、そして出た! シンの必殺技コブラクロー! もがき苦しむゼブラーマン。虎とコブラのW苦手を前に、ゼブラーマンの野生は風前の灯火となった。

 シンはトーキックからゼブラーマンをコーナーに押し付けてのパンチを見舞う。レフェリーに注意を受けると、その間にセコンドのサブゥーがサーベルで無法攻撃だ。こんなことをされて、正義の心が黙っていられるわけがない。死力を振り絞って立ち上がったゼブラーマンは、シンをコーナーに押し付けてゼブラースクリューの一撃!さらに正拳突きを一ダースほどぶち込んでいく。

 だが、シンはダウンしたと見せてシューズから凶器を取り出し、ゼブラーマンにお返しの一撃。まさに悪の限りを尽くすシンを、ゼブラーマンは止める事が出来ない。最後はストンピングからのコブラクローに捕らえられ、3カウントを聞いてしまった。

 長い野生の王国の歴史の中で、シマウマが虎に勝ったという事実はない。やはり、草食動物は肉食動物に勝つ事は出来ないのか。つまり、ゼブラーマンでは力不足だったというのだろうか!?

 シンとサブゥーに蹴られ続けるゼブラーマン。しかしそこで、日本が生んだヒーローのピンチにアメリカンヒーローが救出に現れた。そう、ダスティ・ローデスだ!

 かつて(というか大昔に)、新日本プロレスでも抗争を繰り広げていたシンとローデスが、長い時を経て再会したのである。後ろには、先ほどの試合後に和解を求めたコリノまでおまけにくっついて来ている。

 エルボーでシンとサブゥーを蹴散らすローデスに、観客は拍手喝さい。悔し紛れに、シンはなんとお客さんに蹴りを見舞う暴挙。悪の中の悪とは、この男の事である。さらに観客席になだれこみ、客席を蹴散らしていく。恐怖に打ち震え、逃げ惑う観客。少年時代の榊原社長でさえ、シンに追いかけられて逃げたという伝説があるほどだ。すでに49歳だというのに、何とパワフルな男なのであろうか!それを負けじと50歳のローデスが、奪ったサーベルを手に追い掛け回す。

 まんまと逃げおおせたシンだったが、ローデスの正義の心の炎は燃えたままだった。マイクを握ると「お前がサブゥーを連れてくるのなら、俺がやってやる! パートナーを誰にするか?」と、次回ハッスル4でのタッグ対決をアピールした。ローデスのパートナーに名乗りを挙げたのは、先ほど「次こそ白黒つけるぞ」とマイクアピールしたゼブラーマンではなく、コリノだった。

 コリノののど元にサーベルを突きつけるローデス。本気か? 本当にやる気があるのか? ローデスはコリノの気持ちを確かめると、今度はガッチリと握手を交わした。これにて、次回ハッスル4でのローデス&コリノ組VSシン&サブゥー組の因縁の対決が、ほぼ実現決定だ! リング上には、その存在すら忘れ去られたゼブラーマンだけが、ぽつんと立ち尽くしていた。

 おいおい、次こそ白黒つけてくれよ、ゼブラーマン!


第3試合

6分37秒 エルボードロップ→体固め

『ハッスル1』で遺恨を残したローデスとコリノ。試合前、コリノは「あいつはデブ。本物のレスラーじゃない。コリノは本物のレスラーだ」と叫ぶ。花道に姿を見せたコリノからはいつものコミカルな雰囲気は感じられない。

閉じる ローデスのリングインを待たずに後ろから強襲。パンチとストンピングの連打で滅多打ちにする。そして左足に的を絞ると容赦なくストンピングを見舞う。完全にシリアスモードのコリノはローデスを場外に落とすと今度はイス攻撃。さらに凶器攻撃によってローデスの額からは流血が。しかし逆にこれがローデスのプロレス魂に火をつけた。コリノを放送席の目の前の鉄柵や机に叩きつける。コリノの長髪を掴むと鉄のコーナーポストに頭をぶつけ、今度はコリノが大流血。ブロンドの髪が真っ赤に染まる。しかし若さで勝るコリノはすぐに蘇生。ローデスにハイキックを食らわせると、強引にリングに戻す。そしていつもの「ハシモト、バカッー!」からDDT、続いて「オガワ、モットバカッー!」で不細工ながらもSTOを決める。そして覚えたばかりの新モノマネ、長州の腕を回すパフォーマンスも披露。だが、1発1発の重みはやはりローデスに分がある。不用意に近づいたコリノに強烈なヘッドバット。そしてナックルパートでコリノをダウン寸前まで追い込んでいく。しかしコリノはローデスの傷口をかきむしってこのピンチを脱出。ローデスのブーツをとって再び左足を殴りつける。ここを勝負どころと見たコリノはトップロープに上り、空中殺法を試みるが、この攻撃で試合は急展開を迎える。ローデスはコリノが飛ぶその前に、本家本元のデッドリードライブ! ブーツを奪い返すと、それでコリノに一撃、体重を充分乗せたエルボー。さすがのコリノもこの連続攻撃をくらってフォールを返す力は残っていなかった。

 試合後、これまでの遺恨はノーサイドだと、ローデスは握手を求める。しかしコリノはこれを拒否。2人の間に友情は芽生えないのだろうか…


第2試合 ハッスル ワールドプロレスリング 〜世界のプロレスから・メキシコ編〜

11分32秒 ウラカンラナ

閉じる 両軍とも花道でハッスルポーズを決め、ド派手なコスチュームで観客にアピール。あらゆる性別(?)を超えて、それぞれが男&女&オカマ&ミニのタッグを結成しての、まさにメキシコ・AAA直輸入の試合が展開された。 先発は闘牛士のコスチュームがカッコいいテコニコ軍のセビージャと、スケベ親父のアパッチェ。いきなり両者ロープに飛ぶが、セビージャが次々と華麗な技を披露。これに怒ったアパッチェは強烈なビンタを見舞う。

 ここでお互い女子にタッチ。白と青のコスチュームが美しいモレノは、場外に落ちたまっ黄色の下品なコスチュームを着たファビーへ、エプロンを走り抜けてのヒップアタック。

 代わって両軍のコーナーから出てきたのは、待望の(?)オカマ同士。両者がロープに飛ぶが、ポルボが両手を広げて華麗に舞うのに夢中なあまり、ピンピネーラに蹴っ飛ばされる。両者は場外へ。ピンピネーラは観客席から好みの男性ファンを見つけ、さっそくキスを交わそうとするが、これはポルボが阻止。思い切りポルボが客席へピンピネーラを飛ばすと、ピンピネーラは見事、男性ファンの膝の上に着地。これに嫉妬したポルボが突っ込むと、ピンピネーラがかわして自爆してしまったポルボだが、男性ファンからキスを奪うことは忘れなかった。

 続いてミニ同士の対戦。ルチャ・ファンなら誰もが知っているサグラダの大技の連発に、場内の興奮も最高潮。前に投げ捨てられれば、空中に浮いたままフランケンシュタイナー、相手の頭を両脚に挟み、自らが振り子のようになって投げ捨てる。ネグロがラリアットで反撃しようとしても、小さすぎて当たらない。

 その後も、サグラダが大活躍。ポルボを空中殺法で手玉に取り、アパッチェの体の上をクルクルと回りウラカンラナを仕掛ける。アパッチェが蹴りやビンタをサグラダに見舞うと、この弱い者いじめに場内から大ブーイング。

 どうにもやりにくいルード軍は、娘ファビーがベルトを持ち出し、アパッチェをフォローしようとするが逆に親子相打ち。この隙をついたサグラダが、一気に勝負に出るがアパッチェも負けてはいない。サグラダをショルダースルーで投げようとするが、サグラダは背中で足を両腕に引っ掛け、そのまま後方へ回転。アパッチェを丸め込んで3カウントを奪った。

 大喜びのピンピネーラは両手を広げ、腰をフリフリ、サービスたっぷりに引き上げていった。


第1試合

13分22秒 ファイナルカット→片エビ固め

前回に引き続き、色男タッグを組んだカズ&スパンキー。客席から女性ファンを花道に引き上げてリングインするという粋な計らいを見せる。しかもタイタニックポーズの後にキスまでしてしまうスパンキー。男前のスパンキーだからこそ許される行為だ。

閉じる 先発はLowkiとスパンキー。ジュニアならではスピーディーなグラウンドの攻防を見せる。腕、足、首とめまぐるしく関節を取り合う。その後、両手4つで力比べ。スパンキーがニュートラルコーナーからフランケンシュタイナーを見せれば、Lowkiもフォールを返すとそのままブリッジしてスパンキーを睨みつける。

 ここで互いにタッチ。みちのくプロレス時代の同期の二人がハッスルのリングで対峙する。小細工はなしだと言わんばかりにショルダーアタックを打ち合う。これに打ち勝ったカズがTAKAをロープに振ってそのままフランケンシュタイナーで場外に投げ捨てると、トペコンヒーロを敢行!  それを合図にLowki、スパンキーが次々と場外へ飛び出していく。そして先にリングに戻ったTAKAまでもがトペを見せ、場内はヒートアップする。

 リング上でTAKAに対し、ダブルでドロップキックをみまうカズ&スパンキー。しかしTAKAもチョップの打ち合いでカズをマットに叩きふせる。

 タッチを受けたLowkiはフラッシングエルボー、再びTAKAにタッチすると、カズの顔面をかきむしり、踏みつけ。鼻に指を引っ掛けるなど、カズのいい男が台無し。しかも長時間、相手コーナーでつかまってしまい、TAKAにやられまくる。しかしTAKAのトップロープからのボディプレスをドロップキックで迎撃すると、ここでスパンキーにタッチ。

 力を温存していたスパンキーはTAKAに対しエルボーの連打からジャンピングエルボー、ドロップキック。たまらずカットに入ったLowkiにもドロップキックでそれを許さない。スパンキーのコーナーを使ったムーンサルトにTAKAはたまらずLowkiにタッチを求める。しかしスパンキーの勢いは止まらない。Lowkiの飛びつき十字を落ち着いて外すと、コーナー最上段からフルネルソンスープレックスを狙うLowkiを叩き落とし、逆に飛びつきフランケンシュタイナーを見せる。

 タッチを受けたカズはロープの反動を利用してエルボー。しかしLowkiも全く同じ動きでエルボーを返す。ここでLowkiもTAKAにタッチ。カズのジャーマンをそのまま回転して立ち上がり、身体能力の高さを見せるが、カズもすぐに反応しキックで迎撃。セカンドロープからムーンサルト、TAKAを無理やり起こして担ぎ上げると、頭からマットに叩き落とし、フォールに入る。ここはLowkiがすぐにカット。コンビネーションなら色男タッグも負けてはいない。すぐにスパンキーがLowkiを場外に落とす。

 この隙をついてTAKAがハイキックからカズをフォール。後ろから羽交い絞めにして、Lowkiをリングに呼び戻す。そこにLowkiがスペースローリングエルボー。しかしカズは待ってましたとばかりに誤爆を誘う!  そしてスパンキーがLowkiを押さえ込む間に、カズがファイナルカットでTAKAから3カウントを奪った。