ここがダメだよ!『ハッスル』・第二回
別冊ゴングプロデューサー
吉川義治氏インタビュー(後編)
2007年2月16日昨年11月23日、ハッスル3年間の集大成である『ハッスル・マニア2006』が開催され、ファイティング・オペラの第一幕が閉幕、2007年のハッスルは新章に突入する。これからのハッスルはどう変わっていくべきなのか? ハッスル・オフィシャルサイト取材班が、別冊ゴング・吉川義治プロデューサーにインタビュー、ぶっちゃけハッスルってどーよ、と根掘り葉掘り聞いてみた。
――吉川さんには以前、チーム3Dが来日する前に見所を語っていただきました。自分たちのスタイルを崩さずにシリアスにいくパターンと、ハッスルの世界に順応していくものの2パターンが考えられると予測されていました。チーム3Dはどうでしたか?
3Dは自分自身を押し通しすぎたために難しくなってしまいましたね(笑)。シビアな意見になってしまうのですが、チーム3Dが別の団体に来た時にスタイルは一つだったんですよ。凝り固まっているから一回見たら面白いんですけど、何回も見たらつまらなくなるんです。そういうキャラなんです。あの時は期待感を煽ろうと一生懸命に話しましたけど(笑)。初めて見る人は楽しいですけど、2回3回と見ていくと同じキャラなんで苦しくなっていく。
――実際に会場にいるファンの反応を見ていてチーム3Dに飽きているような印象を受けますか?
そういう感じは受けますね。でもチーム3Dはハッスルを理解して女子と絡んでいるわけですし、今後どうハッスルを解釈していくのかが注目ですよ。
――チーム3DはRGなどの芸人とも絡みました。
そういう意味でも、ハッスルはレスラーの力量が問われる舞台ですよね。初めのハッスルは芸能人ありきのプロレスっていうイメージが強かった。「レスラーはこのままでいいの?」みたいなイメージで進んでたんですけど、レスラーも慣れてきた部分が出来てきた。川田選手を見ているとしゃべりでも決してヒケを取らないようになっていますよね。TAJIRI選手はよくアメリカンプロレスのベースで“間のプロレス”を大事にしている選手なんですけど、ハッスルは非常に間のあるプロレスです。間で見せるプロレスです。試合においてもいい距離感であったり、緊張感を保つ選手たちが揃っていると思います。日本のプロレス界のトップどころが集結していますから。そういう選手たちがいてマイクでも、間を理解し始めていて芸人に負けないものを見せ始めていますよね。試合においてもマイクにおいても間を楽しめるのがハッスルです。
――川田選手や天龍選手をずっと見てきたファンはそういったハッスルでの変貌ぶりを受け入れやすいものなのでしょうか?
今のファンはどうなんでしょう。昨年はハッスルに天龍や鈴木、高山も上がったりしました。プロレス界で柔軟で頭の切れる人が一回ハッスルに上がってみたいという思いがあるわけなんです。一回上がって物に出来るのか、とけこめるのか、自分が勝るものが見せれるのか、そういう衝動がある。新しい試みを理解した上で継続してそういう選手たちがハッスルに上がっているというのは、「自分たちがもっとプロレスを面白く、世間に対しても広めていける」という挑戦をしていると思います。
――小さい頃から川田選手のバチバチの試合展開を見ていたのですが、まさかあそこまでトークが出来る人だっていうのは驚きでした。
川田は“デンジャラスK”という一面もあって、シビアなイメージが強いですね。個人的に話しているとお笑いが大好きな人で、それは実は隠し持っていた部分なんですよ。それを解放出来る、そして違った一面を出せるという場のハッスルがなかったらそういう一面は出せなかったでしょう。
――ユニークな一面を持っている川田選手を活かせる場があればいいのにな、と思われたことはありますか?
それはなかったですね。それを数年前にやると拒絶反応になっていたでしょうから。そういうステージがなかったですからね。昔の大仁田厚がいたFMWの流れから故・冬木弘道のFMWになった時にエンターテインメント色が強くなりました。面白いんだけどもファンの食いつきが悪くって、結論から言えば「10年早かったな」と。そのベストのタイミングで生まれたのがハッスルだったんですよ。
――天龍選手が率いるWARもエンターテインメント色が強かったですよね。
そうですね、WARがそうでしたし。色んなキャラクターがいて女子レスラーと戦ってみたり、相撲選手にマスクを被せたりとか結構色んなキャラクターをWARでは作っていました。そういった色んな仕掛けをしたけど「早すぎた」という結果なんです。
――話しは変わりますが、吉川さんが編集長を務められていた時期はハッスルをどう扱っていたのですか?
ハッスルをずっと見てて、理屈じゃない部分の面白さを追求していました。プロレス業界は理屈をあまりにもこねくり回しています。それで自分の首を絞めている背景がある。見たまんま面白ければこれに勝るものはないので、どう料理するかが問題になる。理屈なりのプロレスはもう通用しないと思いますよ。
――ハッスルを大きく扱って読者から否定的な意見はありましたか?
それはありましたよ。「あれはプロレスじゃない」という意見も。うちの編集者もそうでしたけど、会社としても「あれはどうなんだ?」という意見もあって面白かったですね。
――面白ければ取り上げていくと?
基本的にプロレスってどう取り上げられるか分からないですけど、僕の意識の中ではプロレスは興行なんで、客を入れたモン勝ちなんですよ。周りが何を言おうが、客を入れて盛り上がれば認知されたもの。それを否定することは出来ないと思うんですよね。それで(ハッスルを)取り上げてました。
――吉川さんが扱っていた雑誌でハッスルが表紙を飾ったこともありましたか?
そうですね、僕の中では抵抗感はないです。その中で火がついてくれれば色んな意見があってちょっとでも熱くなれればいいんじゃないですか?
――ハッスルを扱っている号の売り上げはどうでしたか?
『ハッスル・マニア2005』を扱ったときは部数的には良かったですよ。高田総統を表紙にしたときも良かったですし。そのときは新聞社から取材がきて「何でこういう表紙なんですか?」と食いつきがありました。「プロレスって固いイメージがあるんですが、凄い表紙ですね」って。その時は「そういうイメージを壊すのがハッスルなんです」と言っておきました(笑)。
――ハッスルを取材している時と、他団体を取材するときとでは、感覚が違いますか?
違いますね。ハッスルはいい意味で受け身の取材になりますね。これまでは理屈にこだわっていて、試合を見て色んな主観を入れてきたんです。見た試合以上に文章として作りこまないといけない意識がありました。逆にハッスルというのは、まず受け身でボッと見て、笑ったり、首をかしげて見て「ここをどう料理すればいいんだろう」って考える。こっちからいちいちネタを探さなくっていいんですよね(笑)。これまでのプロレスの取材だと自分たちでテーマを見つけて、こっちのレスラーにスポットを当てて掘り下げてみようとかこねくり回していました。
――普通に楽しみながら見ているんですね。
もう観客に近いですよ(笑)。
――他団体を取材していて、ハッスルに上がってほしいレスラーはいますか?
いや〜こっちから言うよりは、興味ある人が来るでしょう。現実的に具体名を出しても可能性があるとは限らないですからね。新日本から上がるとは思えないし、全日本とはプロレスラーの交流はあると思いますが、継続性や接点があっても流れは作れません。フリーのトップ選手が上がる可能性はあると思うんですけどね。
――プロレス大賞2006の表彰式ではHGと棚橋選手が対面し、「もうプロレスはボーダレスな時代だから、いつかは同じリングに上がりたい」という発言が棚橋選手の口からありました。
本人は割り切っちゃって、HGと一緒にリングに上がりたという想いはあると思うんですけど、会社の都合で「どうなんだろう」というのはありますよ。
――老舗の団体がハッスルと交わるのを嫌がる理由は何だと思いますか?
一から作り直そうという時期に、ハッスルの方まで針を振れないというのがあると思います。
――大会場を常に満員にするためには、ハッスルに何が必要でしょうか?
これ以上、テコ入れする必要があるのかどうか疑問ですよね。本当はハッスルが地上波に乗っていれば一気に認知されていたと思うんです。今までやってきたことをリバイバルしてちょっと工夫すれば、『ハッスルはこういうことをやっているんだよ』と世間に広まっていたんじゃないかと。だから世間に出る前にテコ入れしすぎるのは、より世間に届きにくくなるんじゃないかと思うし、微妙なところですよね。車で言えばマイナーチェンジするように変わっていくことがある中で、ハッスル軍と高田モンスター軍の抗争がどう展開していくのか、どれだけボリュームが増えていくのか、今までやってきたことをどう厚みを増やすのかだと思います。3年間やってきて業界内、ファンに浸透しているのは間違いないですから。
――他団体でもハッスルを意識しているところは多いですよね。
よく我慢されたなと思いますよ。旗揚げした当初は、風当たりが強くて「何だよ、これ」みたいな空気の中、“継続は力なり”で風向きを変えましたからね。変えられたのは中身が良かったからでしょうし。
――これからのハッスルの何に注目していますか?
まずテーマはハッスル軍ですよね。何を見せてくれるのか? しっかりした物を見せ付けないと。そしてザ・エスペランサーがいい意味で色んなものを破壊してくれればいいかなと思います。
3Dは自分自身を押し通しすぎたために難しくなってしまいましたね(笑)。シビアな意見になってしまうのですが、チーム3Dが別の団体に来た時にスタイルは一つだったんですよ。凝り固まっているから一回見たら面白いんですけど、何回も見たらつまらなくなるんです。そういうキャラなんです。あの時は期待感を煽ろうと一生懸命に話しましたけど(笑)。初めて見る人は楽しいですけど、2回3回と見ていくと同じキャラなんで苦しくなっていく。
――実際に会場にいるファンの反応を見ていてチーム3Dに飽きているような印象を受けますか?
そういう感じは受けますね。でもチーム3Dはハッスルを理解して女子と絡んでいるわけですし、今後どうハッスルを解釈していくのかが注目ですよ。
――チーム3DはRGなどの芸人とも絡みました。
そういう意味でも、ハッスルはレスラーの力量が問われる舞台ですよね。初めのハッスルは芸能人ありきのプロレスっていうイメージが強かった。「レスラーはこのままでいいの?」みたいなイメージで進んでたんですけど、レスラーも慣れてきた部分が出来てきた。川田選手を見ているとしゃべりでも決してヒケを取らないようになっていますよね。TAJIRI選手はよくアメリカンプロレスのベースで“間のプロレス”を大事にしている選手なんですけど、ハッスルは非常に間のあるプロレスです。間で見せるプロレスです。試合においてもいい距離感であったり、緊張感を保つ選手たちが揃っていると思います。日本のプロレス界のトップどころが集結していますから。そういう選手たちがいてマイクでも、間を理解し始めていて芸人に負けないものを見せ始めていますよね。試合においてもマイクにおいても間を楽しめるのがハッスルです。
――川田選手や天龍選手をずっと見てきたファンはそういったハッスルでの変貌ぶりを受け入れやすいものなのでしょうか?
今のファンはどうなんでしょう。昨年はハッスルに天龍や鈴木、高山も上がったりしました。プロレス界で柔軟で頭の切れる人が一回ハッスルに上がってみたいという思いがあるわけなんです。一回上がって物に出来るのか、とけこめるのか、自分が勝るものが見せれるのか、そういう衝動がある。新しい試みを理解した上で継続してそういう選手たちがハッスルに上がっているというのは、「自分たちがもっとプロレスを面白く、世間に対しても広めていける」という挑戦をしていると思います。
――小さい頃から川田選手のバチバチの試合展開を見ていたのですが、まさかあそこまでトークが出来る人だっていうのは驚きでした。
川田は“デンジャラスK”という一面もあって、シビアなイメージが強いですね。個人的に話しているとお笑いが大好きな人で、それは実は隠し持っていた部分なんですよ。それを解放出来る、そして違った一面を出せるという場のハッスルがなかったらそういう一面は出せなかったでしょう。
――ユニークな一面を持っている川田選手を活かせる場があればいいのにな、と思われたことはありますか?
それはなかったですね。それを数年前にやると拒絶反応になっていたでしょうから。そういうステージがなかったですからね。昔の大仁田厚がいたFMWの流れから故・冬木弘道のFMWになった時にエンターテインメント色が強くなりました。面白いんだけどもファンの食いつきが悪くって、結論から言えば「10年早かったな」と。そのベストのタイミングで生まれたのがハッスルだったんですよ。
――天龍選手が率いるWARもエンターテインメント色が強かったですよね。
そうですね、WARがそうでしたし。色んなキャラクターがいて女子レスラーと戦ってみたり、相撲選手にマスクを被せたりとか結構色んなキャラクターをWARでは作っていました。そういった色んな仕掛けをしたけど「早すぎた」という結果なんです。
――話しは変わりますが、吉川さんが編集長を務められていた時期はハッスルをどう扱っていたのですか?
ハッスルをずっと見てて、理屈じゃない部分の面白さを追求していました。プロレス業界は理屈をあまりにもこねくり回しています。それで自分の首を絞めている背景がある。見たまんま面白ければこれに勝るものはないので、どう料理するかが問題になる。理屈なりのプロレスはもう通用しないと思いますよ。
――ハッスルを大きく扱って読者から否定的な意見はありましたか?
それはありましたよ。「あれはプロレスじゃない」という意見も。うちの編集者もそうでしたけど、会社としても「あれはどうなんだ?」という意見もあって面白かったですね。
――面白ければ取り上げていくと?
基本的にプロレスってどう取り上げられるか分からないですけど、僕の意識の中ではプロレスは興行なんで、客を入れたモン勝ちなんですよ。周りが何を言おうが、客を入れて盛り上がれば認知されたもの。それを否定することは出来ないと思うんですよね。それで(ハッスルを)取り上げてました。
――吉川さんが扱っていた雑誌でハッスルが表紙を飾ったこともありましたか?
そうですね、僕の中では抵抗感はないです。その中で火がついてくれれば色んな意見があってちょっとでも熱くなれればいいんじゃないですか?
――ハッスルを扱っている号の売り上げはどうでしたか?
『ハッスル・マニア2005』を扱ったときは部数的には良かったですよ。高田総統を表紙にしたときも良かったですし。そのときは新聞社から取材がきて「何でこういう表紙なんですか?」と食いつきがありました。「プロレスって固いイメージがあるんですが、凄い表紙ですね」って。その時は「そういうイメージを壊すのがハッスルなんです」と言っておきました(笑)。
――ハッスルを取材している時と、他団体を取材するときとでは、感覚が違いますか?
違いますね。ハッスルはいい意味で受け身の取材になりますね。これまでは理屈にこだわっていて、試合を見て色んな主観を入れてきたんです。見た試合以上に文章として作りこまないといけない意識がありました。逆にハッスルというのは、まず受け身でボッと見て、笑ったり、首をかしげて見て「ここをどう料理すればいいんだろう」って考える。こっちからいちいちネタを探さなくっていいんですよね(笑)。これまでのプロレスの取材だと自分たちでテーマを見つけて、こっちのレスラーにスポットを当てて掘り下げてみようとかこねくり回していました。
――普通に楽しみながら見ているんですね。
もう観客に近いですよ(笑)。
――他団体を取材していて、ハッスルに上がってほしいレスラーはいますか?
いや〜こっちから言うよりは、興味ある人が来るでしょう。現実的に具体名を出しても可能性があるとは限らないですからね。新日本から上がるとは思えないし、全日本とはプロレスラーの交流はあると思いますが、継続性や接点があっても流れは作れません。フリーのトップ選手が上がる可能性はあると思うんですけどね。
――プロレス大賞2006の表彰式ではHGと棚橋選手が対面し、「もうプロレスはボーダレスな時代だから、いつかは同じリングに上がりたい」という発言が棚橋選手の口からありました。
本人は割り切っちゃって、HGと一緒にリングに上がりたという想いはあると思うんですけど、会社の都合で「どうなんだろう」というのはありますよ。
――老舗の団体がハッスルと交わるのを嫌がる理由は何だと思いますか?
一から作り直そうという時期に、ハッスルの方まで針を振れないというのがあると思います。
――大会場を常に満員にするためには、ハッスルに何が必要でしょうか?
これ以上、テコ入れする必要があるのかどうか疑問ですよね。本当はハッスルが地上波に乗っていれば一気に認知されていたと思うんです。今までやってきたことをリバイバルしてちょっと工夫すれば、『ハッスルはこういうことをやっているんだよ』と世間に広まっていたんじゃないかと。だから世間に出る前にテコ入れしすぎるのは、より世間に届きにくくなるんじゃないかと思うし、微妙なところですよね。車で言えばマイナーチェンジするように変わっていくことがある中で、ハッスル軍と高田モンスター軍の抗争がどう展開していくのか、どれだけボリュームが増えていくのか、今までやってきたことをどう厚みを増やすのかだと思います。3年間やってきて業界内、ファンに浸透しているのは間違いないですから。
――他団体でもハッスルを意識しているところは多いですよね。
よく我慢されたなと思いますよ。旗揚げした当初は、風当たりが強くて「何だよ、これ」みたいな空気の中、“継続は力なり”で風向きを変えましたからね。変えられたのは中身が良かったからでしょうし。
――これからのハッスルの何に注目していますか?
まずテーマはハッスル軍ですよね。何を見せてくれるのか? しっかりした物を見せ付けないと。そしてザ・エスペランサーがいい意味で色んなものを破壊してくれればいいかなと思います。